エルダー9特集会社の成長のカギを握る「高齢社員の活かし方」図表2 高齢社員がやりがいを持って活躍できる職場環境の整備※ 筆者作成「高齢社員とはこういうもの」という、昔ながらの見方をアンラーニングする後輩社員のメンター役~知識スキルなどの伝承や若手のケアなどに取り組む~目標設定と評価~しっかり目標を立て、評価する~キャリアの棚卸機会~自分のキャリアを考える機会を設ける~高齢社員に対するまなざしを職場全体でアンラーニング(学び直し)し、高齢社員がやりがいを持って活躍できる環境を整えることが大事【高齢社員への施策】【高齢社員以外】響を与えるとも思えないのです。では、どうすればよいか。いくつかのアイデアを提起します(図表2)。①キャリアの棚卸機会いまの若手社員は、学校教育でもキャリア教育を受ける機会がありますが、高齢社員は、学校教育だけでなく、職業に就いてからもキャリア教育を受ける機会がなかった世代です。したがって、50代・60代になってもキャリアの棚卸をしたことがない人が多いのです。ということは、現在自分が持っている能力は何かや、今後どのように働いていきたいかなどが明確にできていない人も多いのです。高齢社員の活躍を推進するためには、キャリアの棚卸と今後のキャリアを考える機会を設けることがおすすめです。②目標設定と評価まだまだ、「60歳定年後の再雇用以降は目標設定も評価もなし」という運用をしているケースもあるようです。これは、再雇用者の給与を一定額に決めてしまう場合、評価する必要もないとの判断があるからだと思われます。ただ、「今年からは目標設定も評価もない」といわれたら、「何に向かってがんばるのか」、向かう方向も見失うことになるでしょう。これまで述べてきたように、「新しいこともしなくてよい」、「後輩のサポートだけしてください」組織としては、「若い世代を育てなければならない」と考えるのは当然です。そうでなければ、事業を継続することができません。世代交代は、いつの時代でもどの組織でも取り組むべき課題ではあります。とはいえ、「はい、高齢社員はここまででよいです。あとはのんびり若手を見守って支援に回ってください」といわれ、主体的にできる仕事を奪ってしまうことが、組織にとってよい影などといわれても、それでは、「はりきるだけ損」とも思えてきて、省エネモードに陥るのも無理はありません。60歳以前の社員と同じ仕組みでなくても、何らかの目標と評価は検討の余地があるはずです。③後輩指導のメンターの役割とリスキリングの機会ある企業の人事担当者からこんな話を聴きました。「再雇用の社員がいる部署のほうが、若手社員の離職率が低いのです。若手に聴いてみると、『40〜50代の上司や先輩はまだまだ現役でギラギラしている。だから相談しても、そのギラギラ感で対応されるので余計に疲れる。だが、60代の方たちは、よい感じにギラギラ感が薄れているので、話をじっくり聴いてくれるし、自分の悩みの解消ができることがある』といわれたことがあります」別の企業では、新入社員に業務指導をするOJTトレーナーとは別に、ラインの異なる部署の先輩を「キャリアや仕事の相談に応じる」メンター役に任命する仕組みを持っていました。若い社員で回していたメンターを、高齢社員が増えたことから、60代にもになってもらうようにしました。これには右記と同様の効果があったそうです。
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