エルダー2025年5月号
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2025.518りにせず、年一回更新するタイミングを設けるなど、ルールを設けておくことも必要です。③現場管理職との連携知識伝承や高齢社員の育成場面でどのようにスキルマップを活用していくか、現場の管理職に対する教育機会を事前に設けておく、年一回の説明会の場を設けるなどの仕組みを設定して、スキルマップ策定時の目的と運用に乖離を生まない取組みが必要です。④フィードバックと動機づけ導入時の説明だけに留めず、年一回のスキルマップ更新時にあわせてスキル変化に対するフィードバックを行うとよいでしょう。高齢社員の組織に対する貢献を伝えるなど、今後のさらなるスキルアップに対する動機づけも行うことで、スキルマップ活用に対する意識変化も期待できます。⑤知識伝承機会の設定社員や組織への知識伝承を高齢社員に任せきりにすることは望ましくありません。スキルマップで明らかにしたそれぞれの強み・伝承してほしい知識や知見を共有する場を会社として設けることで、高齢社員に対する期待を伝えやすくなります。上記五つの取組みを行う際には、個々人の「経験」から得られる知見・考え方から得られるススキルマップ策定とスキルマップ策定と運用のポイント運用のポイント66高齢社員向けスキルマップ策定時は、含める項目に特徴があります。一般社員向けスキルマップは、能力開発状況の把握・育成が主目的のため、「獲得すべきスキル」の可視化が重要です。一方、高齢社員向けスキルマップは、高齢社員の活用が主目的のため「獲得してきたスキルや経験」を可視化する必要があります。「経験」が含まれる点がポイントです。運用時は、高齢社員の心理的負担軽減とスキルマップを活用していくために、以下五つの点に考慮して工夫を行う必要があります。①目的の周知スキルマップを用いて実現していきたいこと、つまり「スキルの見える化」、「知識伝承」、「高齢社員のさらなるスキルアップ」であることを高齢社員および管理職層に周知して、スキルマップを更新し続けることの意義を浸透していくことが重要です。②プロセスの簡素化と継続性の確保高齢社員が負担感を感じずにスキルマップを入力・更新できるよう、簡易なフォーマットにすること、入力サポート体制を構築しておくことが望ましいでしょう。また、一回入れて終わキルの重要性を伝えていくことを心がけましょう。それによって高齢社員にモチベーション高くスキル継承を行ってもらうことで、組織力強化ひいては企業の競争力強化が実現できるのではないでしょうか。また、今後はデジタル技術の活用によるスキルデータの管理や、柔軟なキャリア設計の導入を進めることで、より効果的な高齢社員活用の仕組みを構築することが求められます。スキルマップは一回つくって終わりではなく、自社にとって最適な仕組みと運用を考え続けることも重要なポイントです。結びに結びに77今後も日本国内の高齢化が進むなか、高齢社員の持つスキルが失われていくことは企業の競争力低下に直結します。特に一朝一夕では身につかない「経験や知見、専門的スキル」を可視化して、若手継承へとつなげていただく、本稿がその一助になれば幸いです。

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