2025.520また、役職定年制廃止のねらいは、効率的な人事配置の実現にもある。「今回の制度改定にあたっては、社員の挑戦を喚起するしかけとして、『役職任期制』を導入しました。年齢に関係なく6年間同じ役職を務めた方はポストオフになる仕組みです。一人の人が一つの役職を占有して、若手のチャンスを奪うことがないように配慮したものです」(山田グループマネージャー)6年間という任期については社内でも議論になったが、その役職に就いて、一通り経営に資する動きが組織長としてできるためには、一定の時間が必要であり、どの部署であっても6年間あれば一通りのことは成し遂げられるであろうという結論に至った。ただ、若手社員の側には、「やはり6年は長い。チャンスがない」という意見もあるという。6年の任期を満了しなければならないことは決してないが、6年間継続するケースが出てくると予想されるため、その役職の仕事にチャレンジしたい社員の意見も鑑みつつ、経過を見て対応していく方針だ。主体的なキャリア形成を主体的なキャリア形成を可能にする等級の複線化可能にする等級の複線化新制度の柱である等級の複線化は、役職任期制とも関連している。従来はプレイングマネー長する一方で、58歳の到達年度にポストオフと給与がダウンする役職定年制は維持し、基幹職者は役職定年後も、65歳まで専任職として職務に就くこととした。一方で、2017年の制度改定から数年を経て、シニア層の優秀な人材が役職を失いモチベーションを下げているというケースが顕在化しており、社内からも「ポストオフ後のシニア社員がモチベーションを低下させている」といった声が多く届くようになっていた。しかも、元役職経験者はこれから毎年積み上がっていく。山田グループマネージャーは次のように話す。「役職定年制度は、役職者としての能力を持ち、貢献意欲の高い方からも役割を奪っており、会社としてもったいないことをしているという想いがまず先立ちました。役職定年制の維持は若手への権限移譲を担保する目的でしたが、結果的にマイナスの面の方が大きいと判断し、今回の基幹職人事制度の改定で廃止することにしました。シニア層のモチベーション向上とあわせて、今後は外部からの優秀な人材の獲得にもつながるのではないかと期待しています」一律的なポストオフの廃止に加え、モチベーションの向上や物価上昇への対応のため、基幹職の年収水準を約10%引き上げた。ン(職務記述書)を設定、それぞれの職務内容を明確にした。あわせて、年収は職務に応じることとし、年齢による処遇の低下や役職定年を廃止した。また、評価制度についても見直しを行い、年収は等級と各年の評価結果によって増減するとし、これまでの「成果に対する評価」に加え、基幹職に求められる行動の達成度を評価する仕組みを整備。そして、従来の社内公募を全基幹職に適用することに加え、社内スカウト制度を導入した。役職定年制を廃止し役職定年制を廃止し「役職任期制」に変更「役職任期制」に変更同社は2017(平成29)年4月に、一般職を対象にした人事制度を改定し、基幹職を含めた全社員の定年年齢を65歳に延長している。一般職については、60歳到達時の給与水準を維持し、賞与や福利厚生なども含め60歳以前と同様の処遇とした。また、疾病や介護に対するサポートとして、短時間勤務や週3日勤務といった柔軟な勤務制度を導入したほか、親や配偶者の介護が必要な社員への支援として、介護支援一時金の導入などを行っている。この制度改定では、「しっかり65歳まで現役として働くことを意識してもらうこと」を重視し、おもに両立支援の整備を行ったそうだ。定年年齢を65歳に延
元のページ ../index.html#22