エルダー33す。作業人数が多ければ、人数の割りふりで調整できますが、2~3人で行っているので、すごくやりくりがむずかしい。ですが、それがやりがいでもあります」と語ります。佐々木さんは、新入社員の実習計画の策定を担当しており、マニュアルの作成なども行っています。基礎から応用までまんべんなく組み込んだもので、「むずかしい仕事ですが、後進を育てていかないと、辞めるに辞められません」と笑いながら話し、若手育成に意欲を見せていました。製造部グループリーダーの三み浦うら祐ゆう樹きさん(31歳)は、佐々木さんから技術的な指導を受けています。「むずかしいところはていねいに教えてくれますし、ときどき『調子はどう?』と様子を見にきてくれるところもありがたいです。仕事以外でも車の不具合の相談や、保険のことなど、いろいろなことを教えてくれるので頼りにしています。今後は佐々木さんの仕事を私が引き継いでいけたらと思っています」営業、製造、社内教育の改善まで提案する顧問製造技術部門および営業渉外部の顧問として活躍する有ある地ち毅たけ成のり(68歳)さんは、Tier1(ティアワン)サプライヤー※2の自動車部品メーカーを定年退職後、前職でつきあいがあった栄和産業の求人情報を見て入社しました。「自動車部品や建設機械キャビンの設計・開発を40数年経験した後、戦略的な情報収集であったり、提案をしたりする業務をになってきたので、その経験を活かせると思いました」とふり返ります。現在は、取引き先へのVA/VE(品質維持とコスト削減を目的にする方法)提案から、社内業務の合理化提案、教育体系立案まで、積極的に提案活動を行っており、そのかたわら、経済動向や業界動向の情報収集を行い、伊藤社長はじめ社内での共有に努めています。「私が行う提案に対して、顧客や同僚からよい反応があるとやりがいを感じます。今後も経済や業界の動向の情報収集に努め、分析と情報共有をしていきたいです」若いころは空手やキックボクシング、登山など、力強い競技や趣味に打ち込んできたという有地さん。「最近は体力の衰えを感じることもある」と話しますが、いまの趣味はボクシングとのこと。「行き過ぎなければよい運動です」と涼しい顔で話します。最後に「会社という公器を少しでもよい状態で後任に渡したい」と抱負を述べました。営業渉外部次長の森もり田た雅まさ博ひろさん(58歳)は、有地さんとともに新規開拓の企業や協力企業を訪問しています。「有地さんは人脈が広く、これまで接触がなかった企業と面談ができるようになりました。営業活動で得た情報を適正に共有してくれるところも頼りになります。好奇心が旺盛で新しいことに興味を持ち、柔軟なところもすばらしいです」と話していました。取材を終え、関プランナーはJEEDの『70歳雇用推進事例集』※3を伊藤社長に示し、「参考に」と同業種で規模が近い企業事例を紹介していました。そして「栄和産業は4~5年で高齢社員がぐっと増えました。高齢社員のモチベーションを高く維持するには、会社側が高齢社員をどうとらえているかがたいへん重要です。佐々木さんも有地さんも会社から期待されていますし、同社は今後も伸びていくと思います」と、今後への期待を語りました。(取材・西村玲)提案事項を整理する有地毅成さん※2 Tier1(ティアワン)サプライヤー……自動車メーカーと直接取り引きする一次サプライヤーを営む企業。Tier1に部品などを納品するTier2、Tier2に納品するTier3と続く※3 裏表紙をご参照ください
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