2025.536はじめにはじめに1少子高齢化にともない労働力人口が減少するなか、高齢者の雇用促進が叫ばれています。雇用の延長や再就職を望む高齢社員の数は、経済的なニーズもともなって、今後も増えていくことが予測されます。しかし、企業における高齢社員の増加にともなって生じる年齢構成の偏りや役割分担の再構築などによって、彼らの意に沿わない事態も生じてきます。例えば、いままでの部下が上司になったり、慣れないパソコン作業やインターネットの操作に従事したりと、従来とは異なる業務に四苦八苦している高齢社員もいることでしょう。また、高齢社員のなかには、「やりがいの持てる仕事を昔ほど任せてもらえなくなった」という不満があったり、一方で自身の身体は疲れやすく、体力の低下を自覚する人も増えてきます。そのため高齢社員のメンタルヘルスを守るための課題を整理し、あらかじめ予防策を講じておくことは、企業にとって高齢社員の有効活用に役立ち、なによりも高齢社員自身の心身の健康を守るために重要なことです。※1 谷口幸一(2010).高齢者の生きがい佐藤眞一・大川一郎・谷口幸一編老いとこころのケア:老年行動科学入門.ミネルヴァ書房高齢社員の生きがい高齢社員の生きがい2高齢社員のメンタルヘルスに大きな影響を与える「生きがい」について考えてみましょう。高齢者にかかわる生きがいには、「生活地盤的要素(居りがい)」と「生活目標的要素(行きがい)」があります※1。「生活地盤的要素」とは、自分の存在意義ややりがいを表し、健康度、社会経済的地位、社会活動の3要素に大別されます。この要素は、まさに高齢社員が担当する仕事の変化にかかわっています。一方、「生活目標的要素」は、人生の価値や意義、喜び、張り合い、生きがいなどをさし、主観的幸福感の概念に相当し、広く生活の質に影響します。高齢社員のメンタルヘルスを守るためには、これら二つの要素に並行して配慮する必要があります。 高齢従業員が安心・安全に働ける職場環境を整備していくうえでは、加齢による身体機能の変化などによる労働災害の発生や健康上のリスクを無視することはできません。そこで本連載では、加齢により身体機能がどう変化し、どんなリスクが生じるのか、毎回テーマを定め、専門家に解説していただきます。第6回のテーマは「高齢社員のメンタルヘルス」です。身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと早稲田大学名誉教授早稲田大学名誉教授順天堂大学客員教授順天堂大学客員教授竹竹たけたけ中中なかなか晃晃こうこう二二じじ高齢社員のメンタルヘルス第6回加齢 による
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