エルダー37質は、自分の働きによってアウトプットに価値を加えること、よりよい成果を得るために効率的なプロセスを組むこと、だれか他者の役に立つことです。長くつちかってきた高齢社員の経験は、きっと本質的な仕事の価値に結びつくはずです。職場では、そういう彼らの経験を活かせる仕事を適材適所に配置し、ほかの世代への支援として役立っていることにやりがいを感じてもらうことです。一方で、お互いの接し方に注意が必要です。ほかの世代が高齢社員をリスペクトして学ぶ姿勢を持つこと、また逆に高齢社員の方からジェネレーション・ギャップの存在を意識したうえで、中堅・若手との関係づくりに注力することが重要です。(2)生活目標的要素への配慮生きてきた年数よりも、これから生きていく年数のほうが短くなり、仕事中心の生活だった高齢社員にとって、残された年数をどう生きていくかを考えることはきわめてむずかしい課題です。職場では、ワーク・エンゲージメントと呼ばれるように、仕事に生きがいを見いだす生き方があります。ワーク・エンゲージメントとは、仕事に対してのポジティブで充実した心理状態のことで、仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得ている状態です。しかし、ややもすると、仕事に対して依存的になってしまってメンタルヘルスを病む原因になりか(1)生活地盤的要素への配慮高齢社員にとって、自分を犠牲にして積み上げてきた会社への貢献や実績は、彼らのプライドを支え、しかし若い世代や中間層の社員には理解してもらえないというもどかしさがあります。このもどかしさは、仕事についての動機づけを低下させる原因になります。しかし、この動機づけの低下は、さらに生活地盤的要素に悪影響をおよぼすために、会社側が行える対策と高齢社員自身が行える対処法を準備しておく必要があります。また、職場などで生じるジェネレーション・ギャップは、仕事のやり方や価値観に大きな影響をおよぼします。50代後半〜60代の人は、長く会社中心の生活を送り、ゼネラリスト志向で、褒められるよりも叱られて育ち、がまんすること、皆勤、無遅刻・無欠勤が美徳と教えられた世代です。特にゼネラリストとして仕事を行ってきた世代には、スペシャリストや個性尊重といわれて育ってきた若い世代との違いを意識することになり、それらはストレスのもとになります。理不尽な下積み生活を続けてきた高齢社員にとって、下積みを嫌い、過程よりも結果を重視する中堅・若手とのつきあい方に戸惑いが生じています。さらに、世の中すべてのスピード感が速くなってきて、昔に通用していたことがいまに活かされないことが多くなっています。しかし、活かせる内容もあります。仕事の本※2 竹中晃二(2023).ヤング中高年:人生100年時代のメンタルヘルス.集英社新書※3 竹中晃二(2021).メンタルヘルス不調の予防を目的としたセルフケア活動実践のすすめ看護10,76-81.ねません。そこで、仕事と家庭、仕事と趣味のバランスを取りながら生活するワーク・ライフ・バランスを保つことが重要になります。高齢社員は、ワーク・ライフ・バランスを保って生活を送っている周りの社員から学んでみたらいかがでしょうか。図表1は、メンタルヘルス状態のよい中高年者が日常生活で行っている「意味がある活動」です。これは、高齢者が日常生活において満足度を強化することを目的に推奨されているものです※2。仕事以外の活動にも目を向け、バランスの取れた生活を送ることで生活目標的要素が強化されます。図表1 「意味がある活動」の内容 ※2活動の内容定義例身体活動運動・スポーツ、ハイキングなどのほか健康増進を目的として行う活動ランニング、筋トレ、登山、ストレッチボランティア・地域貢献他者、地域への貢献を目的とした、無償で行う活動地域のゴミ拾い、子どもの見守り、動物の保護活動自己研鑽・啓発活動知識や能力を身につけ、スキルや技術を高める活動資格勉強、語学、パソコン教室ゲーム・動画視聴スマートフォンやタブレットを用いて行うオンラインゲーム・動画の視聴携帯ゲーム、テレビゲーム、動画視聴アプリ音楽鑑賞・活動音楽鑑賞や楽器演奏CD、サブスクリプション、演奏家事(衣食住関連)日常生活を送るうえで必須となる衣食住全般の活動料理、掃除、洗濯家族の世話育児、両親の介護育児、両親の介護読書・創作活動読書、書道、描画などの創造的活動読書、書道、描画信仰宗教的な意味合いを持つ活動聖書、神社への参拝動物の世話飼育ペットの世話や協同活動ペットの世話、ペットとの活動ガーデニング畑、家庭菜園ほか、庭づくり全般畑、花の世話、家庭菜園副業・投資・収集活動副業・投資、趣味の収集活動副業、投資、ポイント収集身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと加齢 による
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