エルダー2025年5月号
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2025.52一般財団法人日本規格協会システム系・国際規格開発ユニット 社会システム系規格チーム 主席専門職水野由紀子さんで提案、発行に至ったのでしょうか。水野 私はISOの国際規格開発業務にたずさわっていますが、ISOの専門委員会(TC)314において高齢化社会に対応するための規格開発を担当しています。ウェルビーイング向上を目ざすISO25554もTC314で提案・開発されたものです。経済産業省では企業の健康経営を推進していますが、この考え方をベースに国際標準化したいとの声があがったことが最初のきっかけです。その後、企業だけではなく、自治体やさまざまな組織で活用できるウェルビーイング促進の規格をつくろうということで、2021年にISOのTC314に新規プロジェクトを提案し、委員会の投票で可決され、7月から審議がスタートしました。TCに対応する各国内には、その意見を取りまとめる国内委員会があり、日本では日本規格協会が担当しました。25554開発のためTC314に設置されたワーキンググループの議長およ―企業の社員や自治体の住民のウェルビーイング(心身の健康と幸福)の向上に役立つ国際標準化機構(ISO)のISO25554が2024(令和6)年11月に発行しました。水野さんはその開発に尽力されたと聞いていますが、所属されている日本規格協会について、まずは教えてください。水野 日本規格協会グループは「標準化で、世界をつなげる」をスローガンに掲げています。標準化とは、自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化してしまうような“モノ”や“事柄”を単純化、秩序化することです。例えば、乾電池は「単3形」などその大きさや形状を標準化することで、どの製品にも使用することができます。その標準化によって決められた“取り決め”を文章に記したものが規格です。日本規格協会は標準化に関して規格の開発、普及および啓発などを行っています。―国際規格の「ISO25554」は日本提案の規格と聞いています。どのような経緯びプロジェクトリーダーに、佐さ藤とう洋ひろし氏(国立研究開発法人産業技術総合研究所)が就任し、私が会議の運営やプロジェクトの管理を担当するセクレタリを務めています。―プロジェクトには、日本をはじめ約20カ国が参加しています。審議はどのように進むのですか。水野 当初は「ウェルビーイングとは何か」について議論しました。一般的には身体や精神面、社会的によい状態であることと定義されますが、具体的に何かとなるとさまざまな意見があり、文化的背景や社会制度の違い、価値観によってとらえ方が違うことがわかりました。議論を重ねるなかで、ウェルビーイングは多義的で文化や背景によって異なるという認識を共有し、取り組むべきウェルビーイングの領域は各組織が定めるという方向性を確認しました。一方で、ウェルビーイングを促進するためにアプローチできる枠組みが必要ですので、世界共通のガイドラインをつくろうと開発を進めました。―ISO25554の具体的な概要について教えてください。水野 まず企業や自治体、さらにはもっと小さいコミュニティなどの組織を対象に、ウェウェルビーイングの促進に向けた世界共通のガイドライン

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