エルダー2025年5月号
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エルダー39ここでは、その方法として、私たちがさまざまな場で推奨してきた活動のなかから、①こころのABC活動、②職場の雰囲気づくり:DJB(大丈夫?)、の2点について簡単に解説を行います。①こころのABC活動(38ページ図表2)私たちは、被災地域を中心に、「こころのABC活動」と名づけたメンタルヘルス・プロモーション活動を開始しました※5。「A:Act」は、散歩する、好きな音楽を聴く、友達と話すなど、からだ、こころ、そして人とも活動的に過ごすことをさします。「B:Belong」は、行事に積極的に参加する、趣味のサークルに参加するなど、社会的集団に属すことで集団への帰属意識を高め、同時に他者からのサポートを得やすくしています。「C:Challenge」は、新しい活動に挑戦する、ボランティア活動を行う、困っている人を助けるなど、新規の活動や社会奉仕活動をうながす活動を意味します。それぞれの活動を、能動的に実践することで満足感や達成感を味わうことができます※6※7※8。「こころのABC活動」では、肯定的な態度変容を目的として、対象者が望ましい活動に積極的に取り組み、メンタルヘルスをよい状態に保持することを目ざしています。動画(https://www.youtube.com/watch?v=i5RolvCetqY&t=28s)を配信していますのでぜひご覧ください。②環境を整える:DJB(大丈夫?)(図表3)職場で日ごろから声をかけあうことは、人間関係を円滑にするだけでなく、相手に相談しやすくさせます。メンタルヘルスに問題を持つ人は、その気持ちをだれかに伝えたり、ましてや専門家に相談したりすることはハードルが高いと考えがちです。専門家も問題を抱える人をいかに相談のテーブルにつかせるか、連絡させるかという援助要請をうながすことにむずかしさを感じています。オーストラリアで行われている「RUOK?(AreYouOK?)」は、RUOK?と声をかけること、つまり人々が定期的に簡単な声がけをしあったり、それをきっかけに会話を行うことで地域メンバーを元気づけたり励ましたりするキャンペーンで、自殺を防止するために実施されています。私たちも、「DJB(大丈夫?)キャンペーン」と称して、メンタルヘルスに問題を持つ(かもしれない)人を含めて、彼らが相談しやすいように、さまざまな声がけをすることをうながしています。以上、本稿では、高齢社員のメンタルヘルスと題して、メンタルヘルス不調のプリベンション(予防)やプロモーションについて述べてきました。人事・労務の部門にいらっしゃる方には、高齢社員の仕事のやりがいを確保しつつ、高齢者の特徴に合わせた対応が求められます。※6 竹中晃二・上地広昭・綾田千紘(2020).教員における仕事関連イベントが誘発する気分不調の改善―イフ・ゼン・プランの適用―ストレスマネジメント研究16,20-33.※7 竹中晃二・野田哲朗・山蔦圭輔・松井智子(2020).気分症状改善・回復のための自助方略の検討―デルファイ法を用いた調査―.JournalofHealthPsychologyResearch33,125-136.※8 竹中晃二・上地広昭・吉田椋(2020).イフ・ゼン・プランを用いたメンタルヘルス・プロモーション活動の行動変容介入:準実験的研究JournalofHealthPsychologyResearch33,67-79.図表3  DJB(大丈夫?)キャンペーン作成:早稲田大学応用健康科学研究室身体機能身体機能のの変化変化安全・健康対策安全・健康対策とと加齢 による

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