エルダー2025年5月号
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年齢者雇用安定法(以下、「高年法」)による高齢者の継続雇用が規定されて以降は、企業の新陳代謝を図る趣旨で導入されることも多いように思われます。高年法では、現在、65歳までの雇用の確保が義務づけられているところ、その方法としては、①65歳までの定年の引上げ、②65歳までの継続雇用制度の導入、③定年制の廃止が規定されており、企業は、このなかのいずれかの方法により65歳までの雇用維持を図る必要があります(高年法第9条)。この点に関連して、例えば、満60歳で定年役職定年制とは1役職定年制とは、従業員が一定の年齢に達したときに、その者の就いている役職を解く制度をいいます。例えば、55歳に到達した者については、その日以後に初めて迎える人事考課時に部長職および課長職を解くといった制度を構築するような場合が考えられます。役職定年制のねらいは、さまざまあります。本件のように賃金支払総額の抑制によるコストカットを目的とする場合もありますが、高役職定年制は、賃金減額をともなう場合には、労働条件の不利益変更に該当します。そのため、①合理性のある就業規則の変更、または、②労働者の同意が必要になります(労働契約法第10条)。今回のように経営難によるコストカットを理由とする場合には、不利益の程度、変更の必要性、内容の相当性、労働組合等との交渉状況といった事情のほか、特定の従業員層(今回であれば55歳以上の者)のみに負担を集中させていないかといった点が重視される傾向にあります。Aコストカットを目的に役職定年制の導入を考えているのですが、役職定年による賃金の減額は不利益変更に該当するのでしょうか弊社は現在、経営難に悩んでおります。競業他社に比べて経費率が高く、また役職者の賃金額が高水準であることから、役職定年制を導入して、55歳以上の従業員の賃金についてコストカットをすることで経営状況を改善したいと考えていますが、問題ないでしょうか。Q1第83回 コストカットをねらった役職定年制、無期転換権の不行使同意 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲/弁護士 髙木勝瑛2025.540知っておきたい労働法A&Q

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