エルダー2025年5月号
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担を55歳以上の高齢従業員のみに負わせるようなものであったこと、その負担が著しいものであったこと、十分な不利益緩和措置がなされていないことが重視されています。コストカットを目的として役職定年制を導入する場合には、役職定年制という制度上、役職定年制度単体で見れば、高齢従業員にコストカットの負担を負わせるものになってしまうことはある程度避けられないでしょう。そのため、合理性を担保するためには、ほかの年代にも負担を負わせるような制度と抱き合わせで導入したり、不利益の程度を小さくしたり、不利益緩和措置を講じたりといった工夫が必要と考えられます。に与えられます(労働契約法第18条)。無期転換申込権は、「別段の合意」がないかぎりは現状の有期労働契約の労働条件を維持しつつ、期間の定めについてのみ無期に変更する内容で労働契約を成立させることができる権利です。使用者は、労働者から無期転換を希望する旨申し込まれたときには、これを拒むことはできず、期間の定めのない労働契約の成立を承諾したものとみなされます。なお、「別段の合意」として、労使間での合意を締結するか、または、就業規則に無期転換後の労働者を適用対象とする労働条件の規定を定めておけば、無期転換を機に労働条件を変更することは可能と考えられていますが、労働条件の変更がある場合には、労働条件通知書に明記するものとされています。この際に、無期転換申込権の趣旨を阻害するような労働条件の設定については、公序良俗に反して無効となるとも考えられています。また、無期転換申込権については、その権利が発生する前に、無期転換申込権を行使しないことを採用条件とすることやあらかじめ無期転換申込権を放棄する旨の意思表示をさせておくことは、公序良俗に反するものとして無効になると考えられています。そのため、たとえ雇用の柔軟性を確保するためであっても、無期転換申込権の行使時期を迎える「前」に手当や賞与の上乗せをもって、無期転換申込権を行使することをあらかじめ制限してお無期転換申込権発生後であれば、十分な説明を受けた労働者が自由な意思により同意したならば、権利を行使しないことに合意することは有効と考えられます。ただし、無期転換申込権発生前の事前協議によってあらかじめ放棄させることはできません。A賞与の支給等を条件に、無期転換権を行使しないことの合意を得ることに問題はないのでしょうか無期転換を迎えるパートタイマーの従業員について、製品の受注の変動もあるので、雇用の柔軟性は確保しておきたいと考えています。パートタイマーに対して無期転換申込権を行使しないことを前提に、代わりに手当を支給したり、賞与を多めに支給したりすることを検討していますが、本人が同意すれば、そうした対応は可能でしょうか。Q2無期転換申込権の発生要件と留意点1有期労働契約を締結している場合、同一の使用者において、1回以上更新され、かつ、通算して5年を超える期間にわたって労働契約が継続しているときには、通算して5年を超える期間を含む労働契約の期間中において、有期労働契約から無期労働契約に転換する権利(以下、「無期転換申込権」)が労働者2025.542

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