エルダー2025年5月号
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地域・社会を支える地域・社会を支える高齢者高齢者のの底力底力The Strength of the ElderlyThe Strength of the Elderly 労働力人口の減少が社会課題となるなか、長い職業人生のなかでつちかってきた知識や 労働力人口の減少が社会課題となるなか、長い職業人生のなかでつちかってきた知識や技術、経験を活かし、多くの高齢者が地域・社会の支え手として活躍しています。本連載技術、経験を活かし、多くの高齢者が地域・社会の支え手として活躍しています。本連載では、事業を通じて地域や社会への貢献に取り組む企業や団体、そこで働く高齢者の方々では、事業を通じて地域や社会への貢献に取り組む企業や団体、そこで働く高齢者の方々をご紹介してきました。最終回となる今回は、長野県の労働者協同組合上田を取材しました。をご紹介してきました。最終回となる今回は、長野県の労働者協同組合上田を取材しました。労働者協同組合上田(長野県)最終回2025.544「協同労働」という新しい働き方で地域の課題解決に取り組む長野県の東部に位置し、約15万人の人口を擁する上うえ田だ市。労働者協同組合上田(通称、「労協うえだ」)は、JR東日本の北陸新幹線などが乗り入れる上田駅から車で15分ほどの民家を拠点に、活動をしている。現在の組合員数は18人で、内訳は70代が8人、60代が7人、40代が3人。「こんな時代だからこそ 新しい働き方」を合言葉に、組合員それぞれの経験や趣味、資格を活かし、高齢者からの相談事などを仕事にし、地域の課題解決に取り組んでいる。労働者協同組合は、2022(令和4)年10月に施行された労働者協同組合法に基づいて設立された法人で、「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して事業を行い、自ら働くことを基本原理とする組織」とされる。組合員が3人以上集まれば、都道府県への届け出で設立することができ、労働者派遣事業を除くあらゆる事業を行うことが可能。働き手が出資して、自ら経営にたずさわる「協同労働」という新たな働き方を実現する制度で、介護、障害福祉、子育て支援、地域づくりなど、幅広い分野でのにない手の確保、シニア世代の仕事創出などの面からも期待されている。労協うえだの代表理事を務める北きた澤ざわ隆たか雄おさんは現在77歳。20歳のときに農協に就職し、労働組合の専従役員などを務めた後、40歳で広告宣伝などを扱う情報伝達サービスの会社に転職した。その会社が広告収入の悪化で倒産したのを受け、50歳のときに関連の会社を立ち上げ、その会社を63歳で定年退職。その後はアルバイトで、福祉施設の送迎にたずさわった。「さまざまな出会いもあり楽しかった」のだが、そこも70歳で定年となった。2回目の定年後も、「まだ体も動きそうだから、どこかで働こうと思ったが、なかなか自分の思うような仕事に出会えなかった」という。週の何日か時間を区切られて、いわれたことをするだけの仕事しか見つからず、「ちょっとそれだと働きがいがないな」と感じていたそうだ。「やりがい」を求めて職探しをしていた2020年12月、北澤さんは、国会において労働者協同組合法が全会一致で可決・成立したというニュースを耳にした。「さっそく制度の資料を取り寄せました。自分で主体的に新しい働き方で働ける―。『ああ、これだな』と感じて、ぜひ地元で具体化してみようと思いました」(北澤さん)現役時代の先輩を通じて、日本労働者協同組合連合会からの紹介を受け、労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団の北陸信越事業本部を訪問。2021年に、任意団体として「ワーカーズ上田地域応援隊」を立ち上げ、法律施行後の2023年3月に、労協うえだを設立した。地域の高齢者の相談事を仕事にメンバーの個性、経験を活かし楽しんで働くワーカーズ上田地域応援隊でまず取り組んだのは、農協出身の北澤さんが得意とする農業分

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