エルダー2025年5月号
47/68

高齢者高齢者のの底力底力地域・社会を支える地域・社会を支えるエルダー45当初の組合員は5人で、営繕の事業が中心だった。それが市の地域包括支援センターと連携するようになり、地域の高齢者の相談、困りごとに対応する形で、仕事が増えてきた。北澤さんによれば、「『庭の草を刈ってほしい』とか、『エアコンを直してほしい』とか、いろいろな相談事が地域包括支援センターを通じて入ってきます。それをみんなで、できることをやって、お金をもらい配分をして、事業収入を得ながら回していく」という仕組みで活動が広がっている。北澤さんたちが、労協うえだの活動で大切にしているのは、「組合員それぞれの個性を活かすこと」だ。「自分の個性や経験を活かしながら参加できれば、主体的に動けるし、楽しいじゃないですか。そういう働き方があって初めて、活動が広がっていくと思っています」と北澤さんは強調する。実際、組合員には多種多様な人材が名を連ね、例えば設立当初からのメンバー、矢や口ぐち毅たけしさん(70歳)は警察OB。「元気のよい高齢者が、少し弱っている高齢者と助け合うという活動の趣旨を聞いて、自分も健康なうちに、何か社会に役立てたらよいと思った」という。地域包括支援センターが主催した会議をきっかけに、労協うえだに加わった平ひらばやし林浩ひろしさん(67歳)は元小学校教諭。「もともと労働者協同組合法には興味があったのですが、こんな身近でやっている人がいると知ってびっくりした」と話す。土つち屋や一かず夫おさん(60歳)は兼業で活動する組合員で、本業はワーカーズコープ・センター事業団北陸信越事業本部の事務局次長。本業で労働者協同組合を県内に広める仕事をしつつ、実際に自分も労協うえだに入って活動をしている。「本業の定年後、いずれ軸足をこちらに移していこうと考えている」そうだ。地域の課題は地域のみんなで解決老いても自立し仲間をつくり楽しく労協うえだでは今後、市内に10カ所ある地域包括支援センターと連動する形で、5人以上の組合員で構成する10の地域支部を立ち上げる計画で、総勢50人の組織を目ざしている。仕事もメンバーも増やし、「地域の課題は地域のみんなで解決できる。労協うえだを、そんな組織にしていきたい」というのが組合員共通の思いだ。さらに北澤さんは、「高齢者も元気なうちは労働者協同組合のような形の活動に加わり、地域をになっていくのが、ふさわしい超高齢社会のあり方ではないか」と訴える。矢口さんも「やはり老いても、自立ということを捨ててはいけないと思うのです。自立して仲間をつくって、楽しく生きないとね」と強調した。労働者協同組合の活動などで、「支える側」に立つ高齢者が増えれば、地域で好循環が生まれる。そのために北澤さんは、「定年前に、定年後の地域での暮らし方、地域と自分のかかわり方を考えていくべき」と指摘する。「人生100年時代、定年後の残り30年をどう生きていくかは非常に重要な問題です。企業のなかでも、地域が抱える問題、地域で生きていくのに必要なスキルなどについて、研修などを行ってもらいたい」との願いを語った。左から、矢口毅さん、北澤隆雄さん、平林浩さん、土屋一夫さん野。上田市内の知人から広い休耕田を借り受け、応援隊のメンバーで木を抜き、トラクターで耕して家庭菜園にした。現在は「市民ふれあい体験型家庭菜園」として希望者を募り、2000円の年会費で農業体験に活用している。さらに、応援隊に加入したメンバーに電気工事の資格保持者がいたことから、市内のコミュニティスペースのリフォームと空調設備工事を請け負うことができ、営繕に関する仕事もするようになった。労協うえだは、応援隊発足の約2年後に設立。

元のページ  ../index.html#47

このブックを見る