エルダー2025年5月号
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2025.54水野 TC314で2022年に発行した「ISO25550(高齢化社会―さまざまな年齢層を含む労働力のための一般要求事項とガイドライン)」が参考になります。ガイドラインでは、高齢労働者が生産的に働く機会を提供するための環境整備に向けた要件を提供しています。具体的には、「フレキシブルな働き方の提供」、「健康支援プログラム」、「継続学習」、「職場環境の改善・整備」、「若手社員と高齢社員との協業支援」などの項目をあげています。 フレキシブルな働き方の提供では、短時間勤務などワーク・ライフ・バランスを重視した職場環境の改善も必要です。例えば、月曜日の午前中に毎週必ず病院に通う人がいれば、通院に配慮した働き方の提供が求められます。健康支援プログラムでは、定期健康診断以外にも歩くことを奨励したり、健康リテラシーを向上させるためのプログラムを考えたりすることもよいと思います。継続学習ではデジタルなど新しい技術を学び、高齢者が取り残されることのないように人材としてフルに活用すること、そのために企業側が就労環境にマッチしたサポートを提供することが大事になると思います。職場環境の改善・整備では、人間工学的な観点から、例えば高齢社員に合わせて部屋の明るさを調整する、文字を見やすいように大きくする、といった工夫も必要です。また、建物については、段差のないバリアフリーの環境にする、腰痛を予防・軽減するためにいすと机の配置を考えることなども重要となります。―若手社員と高齢社員が協業して一つの仕事に取り組んでいる事例などは、すでに日本の企業にもありますね。水野 高齢社員が若手社員とペアを組んで業務に従事することで相乗効果が生まれる可能性もあります。若い人も高齢者から学びつつ、高齢者も新しい気づきを得るなど、お互いに学び合うことも25550に入っています。フレキシブルな働き方や健康支援プログラム、職場環境改善のための例示も入っていますし、ぜひ参考にしていただきたいと思います。―企業にとっては、25550の取組みも含めて、25554のウェルビーイングの向上を推進するのがおすすめですね。水野 そうですね。何をウェルビーイングとするかは、個々の企業文化や企業理念によって違いますので、そこをベースに具体的に取り組むテーマを設定することになります。その際、25554では「個人のウェルビーイングと企業組織のウェルビーイングの両方を考える」という内容になっています。ウェルビーイングに対する考え方は個人によって違いますし、その集合体としての企業の力点の置き方も、企業ごとに異なるでしょう。また、グループごとに実践することもできます。例えば、営業部門では「体力が一番重要」ということであれば、そのプログラムを実践する、あるいはつねに細かい文字を見ている部署であれば「視力を守るため」など、目ざすウェルビーイングは異なっていてもよいのです。小さいグループがそれぞれ実践し、積み重ねることで、ウェルビーイング重視社会が実現していくことを期待しています。(インタビュー/溝上憲文 撮影/中岡泰博)小さいグループでの取組みの積み重ねがウェルビーイング重視社会の実現につながる一般財団法人日本規格協会システム系・国際規格開発ユニット 社会システム系規格チーム 主席専門職水野由紀子さん

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