2025.562「桁」と呼ばれる台に、必要な長さの糸を巻きつけた「投げ玉」をセットし、竹ひごを1本ずつ載せて、投げ玉を前後に交差させながら編んでいく伝統的技法でつくるのが基本です」そう話すのは、5代目の田中耕太朗さん。東京都伝統工芸士、東京都優秀技能者に認定され、40年以上の経験を有している。使いやすさが評価され食品メーカーも愛用すだれづくりは、材料の準備から始まる。おもな材料である竹の場合、仕入れた竹を必要な長さに切り、汚れを洗い落とす。次に竹を割って削り、乾燥させる。「こうした準備を行うことは、材料である竹の硬さなどの状態を見きわめることに役立ちます」材料が乾いたら、「編み」の作業を行う。1本1本の竹ひごには、割る前に印がつけられており、元の竹と同じ順に並べて編んでいく。「竹は繊維に沿って割れるため、微妙に曲がっています。元通りの順に並べて編むことで、平らで表面がそろったすだれになります」「桁けた」と呼ばれる台に、必要な長さの糸をくくりつけた「投げ玉」を複数かける。その上に竹ひごを1本ずつ置き、打ち玉を前後に交差させながら編んでいく。編み終えたら両端を切りそろえ、上下に桟さんをつけるなどして完成する。「手づくりのほうが、細かいところまで目が届くので、曲がっていたり一様でない材料にも対処できます。ただ、仕上がりにばらつきが出やすいため、集中を切らさず、ていねいな作業が求められます」手づくりは機械での生産と比べて時間もコストもかかるが、「手づくりのほうが使いやすい」と、田中さんのつくる伊達巻き用のすだれを毎年200枚注文する食品メーカーがあるなど、愛用者は多い。「大切なのは、伝統を守りつつ、お客さまの要求に応えることです。そのため、つくり方は時代にあわせて少しずつ変化しています。ときには、お客さまの注文や用途に応じて、金属や化繊などの材料を使っ「手間のかかるものだけでなく、簡単につくれるようなものであっても『ちゃんとしたものを、ちゃんとつくる』ことを大事にしています」
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