エルダー63し大学に行かないままやっていたら、それまでのやり方を受け入れて、工夫も改善もしないままだったかもしれません」大切にしているのは「相手の立場に立って考えること」だという。 「使ってくださるお客さまの立場に立ってつくらないといけませんし、材料の仕入れ先の立場に立たないと、こちらの要望を押しつけるだけでは、よいものはできません」そうしたものづくりの姿勢や考え方を伝える塾を開く構想を持つ。「父や祖父から教わったことは、技術そのものよりも、その根底にある姿勢や考え方だった気がします。生活の環境が変わればものづくりは変わるかもしれませんが、その姿勢や考え方は変わりません。日本の伝統工芸の根底に流れる文化を伝えることを、ライフワークにしていきたいと考えています」株式会社田中製簾所TEL:03(3873)4653http://www.handicrafts.co.jp(撮影・羽渕みどり/取材・増田忠英)てすだれをつくることもあります」例えば、綿の糸よりも化繊の糸のほうが丈夫だが、摩擦や屈折に弱く、伸縮性も劣る。そうした性質を理解したうえで、用途にあわせて最適な材料を提案している。客観的な視点を持つことで工夫や改善ができるように幼いころから家業を手伝いながら育ったが、跡を継ぐ意思はなく、大学では数学を専攻し、卒業後は大学の助手として4年ほど勤めた。その間に家業を客観的にみることができ、すべてを自分でになえるこの仕事の魅力を再認識した。大学でつちかった客観的にみる姿勢は、仕事でも役立っている。「一つひとつの作業に対して『なぜこれをやる必要があるのか』を考えて、あえて違うやり方を試してみたりしながら、そのやり方が理にかなっていることを身をもって証明する習慣がつきました。も竹ひごで編んだすだれは、コースターやランチョンマットなどのテーブルウェアにもマッチする文字や絵を表現した「型抜きすだれ」。普通に編み、型抜きする部分に印をつけてから、ほどいて不要な部分を切り取り、編み直すすだれづくりは材料の下ごしらえから始まる。竹は洗って乾かした後、割って竹ひごにする。小刀で割りながら、材料の良し悪しを感じ取る竹ひごを1本ずつ削って形を整える。のり巻きすだれの場合は、巻きやすいように竹ひごの側面の形をかまぼこ型に仕上げるのり巻きすだれは、桁と投げ玉を使って編んだ後に、その外側を同程度の力加減で手で編んで補強する。2本の糸をまとめて編むよりも、こうしたほうが使いやすくなるすだれの用途や糸の種類などによって、大きさや重さの異なる投げ玉を使い分ける。例えば、きつく編む際には重い投げ玉が用いられる。なかには100年以上前から使われてきた年代物もある vol.351
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