エルダー2025年6月号
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2025.68図表 仕事と介護の両立支援対象者15歳以上の人口介護離職の可能性のある人仕事と介護の両立支援対象者15歳以上有業者(15歳以上無業者43,135,000人)(働きながら介護している有業者)約110,195,000人3,646,400人67,060,400人※総務省「令和4年就業構造基本調査」より筆者作成まり、介護が始まってすぐに辞めている人が全体の12%だということです。介護が始まってから仕事と介護の両立支援をするのでは、介護離職防止対策にはならないのです。介護離職をする理由介護離職をする理由44一般社団法人日本経済調査協議会の『「介護離職」防止のための社会システム構築への提言~最終報告書~企業への調査結果から』(2020年)では、介護離職に至ったケースを四つに分類しています。①両立困難型介護離職、②職場起因型介護離職、③孤立型介護離職、④心情型介護離職の四つです。残念ながら、働く介護者に対するセーフティネットはありません。諸事情から離職したくなくても、離職せざるを得ない状況の方は少なからずいらっしゃいます。要介護者の状況や介護者の生活環境の変化にともない、介護者がいったん離職していた就業を再び始めることを希望するのであれば、そのとき仕事と介護の両立をしながらなのか、はたまた介護がない状況なのかにかかわらず、介護離職者の就労支援は力を入れるべき社会課題だと感じています。一方で、「②職場起因型介護離職」は、介護の有無にかかわらず職場や職業に対して悩みを介護離職は介護に直面して、初めて起こる現象なので、対象者は365万人と思われがちですが、仕事と介護の両立という生活をせずに会社を辞める方もいらっしゃることから、その対象者は介護に直面している、していないは関係ないことがわかります。実際に、厚生労働省委託調査「令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業労働者調査報告書」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)によると、「手助・介護」を始めてから「手助・介護」のために仕事を辞めたときまでの期間で、1カ月未満に辞めた人が約12%いることがわかっています。つしているのは、就業者です。介護離職防止や仕事と介護の両立支援の観点からいうと、対象は「雇用者」です。家族の介護にかかわりながら、いかに仕事を続けるのかが、仕事と介護の両立です。つまり、企業がすべきは、いかに仕事を続けられるかを支援することです。また、雇用者は事業主との雇用契約を締結しています。したがって雇用者には労務提供義務があります。こういった側面からも、雇用者にとっての仕事と介護の両立とは、家族の介護に専念することではなく、労務提供義務を極力まっとうしながら、必要に応じて家族の介護にかかわることであることがわかると思います。介護離職防止対策と仕事と介護の介護離職防止対策と仕事と介護の両立支援の対象者の違いを理解する両立支援の対象者の違いを理解する33介護離職が減らないもう一つの理由は、介護離職防止対策の対象者と、仕事と介護の両立支援の対象者、ならびにその対策の違いを理解していないこともあります。まず対象者から考えてみましょう。介護離職は離職問題なので、全有業者にかかわる課題です。総務省の令和4年就業構造基本調査でいえば約6700万人です。一方で仕事と介護の両立支援の対象者は、現在仕事と介護の両立をしている人約365万人です(図表)。

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