エルダー2025年6月号
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エルダー19特集介護離職防止に向けて図表5 仕事と介護の両立のための情報提供の内容(例)※ 筆者作成1.介護の現状と必要性…日本社会の高齢化の現状等を通じ、介護が他人事でないことを認識してもらう2.介護とは…介護がどうやって始まるか、何年くらい続くかなど介護のイメージを膨らませてもらう3.知っておきたい介護基礎知識…おもに介護保険の仕組みや給付の受け方や内容、お金に関することを知ってもらう4.仕事と介護の両立…介護離職せずに仕事との両立を図ることの重要性や両立に向けての準備について知ってもらう機関の利用も考えましょう。運用のポイント88仕事と介護の両立支援策では、介護自体が介護する従業員の家族構成や状況、介護される家族の状態や住んでいる場所などがさまざまで画一的に考えることはできません。求められる支援も多種多様になりますが、ニーズに合わせてたくさんの制度を導入するとその制度の管理がたいへんなだけでなく、制度を周知することもたいへんです。制度は周知が十分でないと利用されにくくなるだけではなく、職場の上司や同僚なども理解されず業務カバーがやりにくく、周囲の納得度も低くなり、職場の雰囲気にも影響します。仕事と介護の両立で成果を出している企業をみると、共通しているのは、定期的かつ継続的に情報提供をし、相談窓口が充実していることです。仕事と介護の両立では、支援策の充実も大事ですが、仕事と介護が両立できる職場環境づくりが重要です。仕事と介護の両立が円滑な職場環境は、多様性を受け入れ、情報の共有や連携が円滑で、業務が可視化、多能工化され、ほかの人の業務支援がスムーズにできる職場づくりともいえます。には、図表5のような内容の情報提供をします。このように、まだ介護をしていない従業員にも情報提供をすることで、いざというときに仕事と介護の両立がスムーズになるので介護離職の防止となるだけではなく、「お互いさま意識」が醸成され、周囲の従業員の理解が得られやすい職場環境になります。相談窓口・担当者の設置772017(平成29)年1月の育児・介護休業法の改正では、企業に対して介護休業やその他勤務措置の利用に関するハラスメントの相談窓口設置が義務づけられました。今回の育児・介護休業法の改正では、仕事と介護の両立のための環境整備が義務づけられ、その環境整備の措置の一つに相談窓口の設置があります。相談窓口では、個人情報の取扱いに気をつけながら、両立支援のための情報提供のほか、職場の業務調整などのために人事部門や職場の管理職と連携をすることも必要です。また、相談内容は、仕事と介護を両立するための勤務制度のほか、介護保険の利用や介護サービス、介護の仕方など相談が多岐にわたる可能性もあります。対応には限界があることを理解し、対応する範囲を事前に決めておき、必要に応じて外部負担が比較的大きいわりに国が負担していると勘違いをするなど効果を感じないケースも見受けられますので、慎重に検討していきましょう。また、会社が負担した社会保険料は給与として、税金の対象となりますので注意しましょう。情報提供66情報提供の支援を考えるときに、これから仕事と介護の両立を考える従業員と、すでに介護が始まった従業員では必要な情報が異なります。これから仕事と介護の両立を考える従業員

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