エルダー2025年6月号
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エルダー27特集介護離職防止に向けて人事としてはこういった方にこそ、より会社に残ってほしいと思い、話し合いを重ねました。勤務していたのが物流倉庫の事業所で、荷物が到着する時間や集荷の時間に合わせて仕事のタイムスケジュールが決まる関係上、時間単位での休暇取得やフレックスタイムなどの柔軟な勤務がむずかしかったという側面があったことも感じています」さまざまなケースがある介護だけに、多くの休暇が必要な人をサポートする意味でも、前述の「休暇プレゼント制度」の活用にも期待が集まる。同制度はファミリーサポート特別休暇の一部をほかの社員にプレゼントするもので、休暇をプレゼントする側の社員は公募1件につき1日まで提供することができ、プレゼントされる側が受け取れる休暇日数の上限は公募1件につき最大2カ月分までとなっている。「人事が会社の掲示板で、『こういった理由で希望者が出ています』と代理で募ります。プレゼントする人が上限の2カ月分にあたる60人に達したら締め切ります。毎回、公開から1~2日で上限になってストップします。病気で療養している方が希望することが多く、みんな仲間ですので『しっかり回復につとめ、復帰を待っています』という気持ちからプレゼントしています」ほぼ、病気や入院で長期の休みが必要になっ度がありがたい。・職場に各々の時間に出社、退社する社員がいるので気兼ねがない。・介護はどうしても休暇を取らないといけない用事が出てくる。年次有給休暇と合わせることで、休暇を使い切る心配をせず、プレッシャーなく乗り切ることができた。特別休暇は使い切った。・これまで育児などで特別休暇を利用する機会がなく、初めて介護で使った。とても便利な制度だと思った。・チームのメンバーには早い段階で休みが増えることを周知したので、出社のプレッシャーを過度に感じなくてもすんだ。一方で、社内で両立支援制度を整えても、結果的に介護離職にいたってしまった社員もいるそうだ。ファミリーサポート特別休暇をはじめとする社内の各種制度や、法定の介護休業・介護休暇などについて説明をしたうえで、所属部署のメンバーも交え、介護をしながらどういった働き方ができるかを相談したが、両親ともに介護が必要であり症状が重く目が離せないこと、社員本人以外に介護にあたれる人がいなかったことなどから、最終的に本人が仕事との両立に限界を感じて離職にいたってしまったそうだ。「離職してしまうと経済的な面も心配ですし、た社員に利用されているが、介護者が増加するようであれば、介護における事例が出てくる可能性もあるだろう。介護離職の防止に向けた介護離職の防止に向けた今後の課題今後の課題「現在、仕事と介護の両立を行っている社員は、本社勤務でマネージャー職として仕事を采配できる立場にいるので、休みの調整がしやすく、比較的時間の融通が利く環境にあります。ですが、当社の社員の半数がシフト制の販売員です。シフト制において急な休暇の取得にどこまで対応ができるかは大きな課題です。また、介護に対する情報を知りたくても、『どこに聞けばよいかもわからない』という声を聞きますので、介護者の社員が増えてきたら、社員同士で情報交換ができる場があればよいと思っています」介護をすることで心身の疲労が溜まったり、「つらい」と感じたときに、会社に来て会話をしたり、仕事に夢中になっている数時間は介護を忘れられることも、仕事を続けるうえで大きい意味を持つ。介護のためだけでなく、介護の疲労を心身ともにリフレッシュできる環境づくりが、介護離職防止の重要なポイントになっている。

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