エルダー2025年6月号
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も含めて解除されるに至りました。裁判所は、労働者および労働組合の行為を、システム移管の計画を頓挫させる目的で行われたもので、労働者がシステム会社および倉庫業者に伝えた内容も計画を頓挫させることをねらった行動と評価され、再雇用契約を更新しないことには客観的かつ合理的な理由と社会通念上の相当性があるものと認め、契約の終了を認めました。団体交渉においても、システム移管の計画自体の合理性や妥当性が交渉事項と関連させられていたものであり、更新拒絶するという判断には困難がともなうものであったことは想像に難くないところですが、たとえ団体交渉継続中といえども、労働時間中については、通常通りの労務提供が必要です。団体交渉中であったとしても、日常業務における労務提供に不備が著しい状況に至った場合には、再雇用契約を終了させるという判断も許容される場合があります。いわゆる偽装請負として法令違反の問題が生じる可能性があります。偽装請負は、違反者には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金といった罰則があるほか、労働者との間の直接契約が認められる可能性があります。A業務委託先の従業員に対する指示は問題になるのか知りたい当社は、長い間、他社にある業務を委託しているのですが、その会社の従業員に対する指示や労働時間に関する指示、服務規律に関する指示などは当社が行っています。何か問題はあるでしょうか。Q2偽装請負とは1他社に労働力を供給する、いわゆる労働者供給事業は、これを自由に許してしまうと労働者に対する不当な搾取につながりかねないため、法律で許された場合のみ許容されます(労働基準法第6条、職業安定法第44条)。また、労働者供給事業の一つである労働者派遣は、許可を受けた業者のみ行えるものとして、無許可業者がこれを行うことは禁じられています(労働者派遣法第5条第1項)。そして、偽装請負とは、実質的にみれば労働者派遣(労働者供給)であるにもかかわらず、形式的には請負契約や業務委託契約を締結するなどの方法をとって、これらの法的規制を免れようとする行為をいいます。偽装請負を行った場合については、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が規定されており(職業安定法第44条、64条)、また、偽装請負の目的をもって偽装請負を行った場合には、労働者との直接雇用が認められる可能性があります(労働者派遣法第40条の6第1項5号)。裁判例の紹介2⑴ 事案の概要偽装請負による直接雇用が認められた裁判例として、東リ事件(大阪高裁令和3年11月4日判決)があります。本件では、床材の製造などを目的とする会社であるA社が、巾はば木き、床材の製造の請負業務などを目的とするB社との間で、巾木の製造および加工に関して、業務委託契約を締結し、B社に雇用された従業員らは、A社の工場において巾木工程などに従事していました。しかしながら、その後、A社とB社は、業務委託契約を労働者派遣契約に切り替え、2025.642

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