契約期間満了をもって従業員らを整理解雇しました。そこで、労働者らは、本件の業務委託契約が派遣法第40条の6第1項5号に該当するとして、A社からの直接雇用の申込みを承諾する旨の意思表示を行い、A社との労働契約上の地位の確認などを求め、訴訟を提起しました。①偽装請負の状態にあったか、②偽装請負の目的があったかが争点となりました。⑵ 偽装請負該当性裁判例は、「請負人による労働者に対する指揮命令がなく、注文者がその場屋内において労働者に直接具体的な指揮命令をして作業を行わせているような場合には、請負人と注文者との間において請負契約という法形式が採られていたとしても、これを請負契約と評価することができない」としたうえで、「労働者派遣と請負との区別については、……『労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示』が公表されて」おり、これを参照すべきとしました。そして、本件では、B社は、業務の遂行方法に関する指示そのほかの管理を自ら行っていたとは認められないこと、B社が自己の従業員の労働時間管理をしていたとは認められないこと、B社がA社から製品の不具合に関して請負人としての法的責任の履行を求められたことがないこと、原材料や製造機械を自己の責任や負担で調達したものとは認められないことといった事情を認定し、偽装請負の状態にあったことを肯定しました。⑶ 偽装請負の目的また、裁判例は、労働者派遣法第40条の6の規定の制度趣旨について、「違法派遣の是正に当たって、派遣労働者の希望を踏まえつつ雇用の安定を図ることができるようにするため、違法派遣を受け入れた者に対する民事的な制裁として、当該者が違反行為を行った時点において、派遣労働者に対し労働契約の申込みをしたものとみなすことにより、労働者派遣法の規制の実効性を確保することである」とし、労働者派遣法第40条の6第1項5号について、「特に偽装請負等の目的という主観的要件を付加したもの」であり、「偽装請負等の状態が発生したというだけで、直ちに偽装請負等の目的があったことを推認することは相当ではない」が、「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には、特段の事情がないかぎり、……偽装請負等の状態にあることを認識しながら、組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である」と判示しました。これを前提に、本件では、日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたとして、偽装請負の目的が肯定されています。そして結論として、A社と従業員との直接雇用を認めました。終わりに3本裁判例は、①偽装請負該当性の判断にあたって、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準を定める告示」(昭和61年労働省告示第37号。平成24年厚生労働省告示第518号による改正後のもの)を参照していること、②偽装請負の目的の認定に際して、日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていた場合には、特段の事情がないかぎり、偽装請負目的を推認するという考え方を採用したことが特徴的です。他社に業務委託をする場合には、少なくとも、上記告示の基準を満たすものであることをチェックすることが重要でしょう。エルダー43知っておきたい労働法A&Q
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