エルダー45重ねた「大人脳」で優勢になるのが有意味記憶。50・60代では、耳から聞いたことを記憶するより先に、「それってどういう意味だろう?」という疑問がわき、意味を理解してから記憶するようになります。「記憶から理解」するのが無意味記憶の仕組みで、「理解から記憶」するのが有意味記憶の仕組み。ここが50・60代と10代の脳との大きな違いです。聞いたそのままを記憶する、見たままを記憶できる10代と違って、50・60代が記憶するためには陰圧を加える必要があります。その脳の陰圧になるのが「好奇心」や「理由づけ」。あるいは「深い疑問」などです。生きるモチベーションを強くし、情報を脳の中に引き込む陰圧を強くする。それによって50・60代の脳は鍛えられます。「大人脳」でリスキリング「大人脳」でリスキリング記憶力の低下も物覚えの悪さも、加齢による脳の老化が原因ではありません。50・60代の学びではまず、「大人脳」の取り扱いについてしっかり理解するのがポイントでしょう。10代の「学生脳」と、いまの「大人脳」では仕組みが変わっていて、10代と同じ勉強法で学んでも、費やした時間に比例する効果は得られません。一方で、大人には大人なりの脳の使い方があり、それができれば学生時代よりも記憶力を高めることも可能でしょう。学びにおいて50・60代の優位性はたくさんあります。50・60代で「自分には学歴がないから」、「私はたいした仕事をしてきていないから」などという人も多いですが、それはまったく違います。50・60代になるまでに、自分が何度目覚めて、何度食事をしてきたか、考えてみてください。だれもがその間に、多くを学んできているのです。そうした、これまでの人生で学んできたことに対するリスキリングが大切だと考えます。これまで経験していない新しい分野でのリスキリングもありますが、多くの人が忘れている学び直しが、自分の人生のリスキリングです。自分が人生で得たものを、もう一度理解し直すということこそ、私は必要なリスキリングだと思います。新しい分野でのリスキリングとともに、自分の人生のリスキリングができれば、50・60代は、さらに学んでいくことができるはずです。(取材・文 沼野容子)と、脳内の白質が伸びて太くなります。白質が変化すると、それにあわせて皮質の細胞も成長し、表面積が広がります。これが「脳の枝ぶりがよくなる」ということなのです。簡単にいえば、脳に情報を取り込めば取り込むほど、枝ぶりをよくすることができるということです。逆に、年齢を重ね、加齢を理由に学ぶことを諦めたり、新しいことを始めることを億劫がったりしていると、脳内のネットワークが鈍化して、「脳のおじさん化」が起こってしまいます。「学生脳」と「大人脳」の仕組みの違い「学生脳」と「大人脳」の仕組みの違い10代と50・60代の脳の一番の違いは、「無意味記憶」と「有意味記憶」です。無意味記憶は、意味がわからなくても、聞いたものをいったん脳内に入れて吸収するというもの。聴覚から記憶へとつながるルートが強くて使いやすくなっている、10代の「学生脳」では、無意味記憶が主体となります。これが、年齢を重ねて経験値が上がり、蓄積された情報量が増えると、感情系や思考系の新たなルートが広がり、学生脳でのルートが徐々に使われなくなっていきます。そういう年齢を
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