エルダー2025年6月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2025.646第58回今回は、労働生産性と労働分配率について取り上げます。両方とも人事の主要テーマである賃金水準や働き方に密接にかかわる指標(判断・評価の基準や目安)です。労働生産性は労働者の成果を指標化したものまずは、労働生産性からみていきますが、労働生産性の定義の前にそもそも生産性とは何かについて確認していきましょう。日本の生産性向上の推進活動を行っている公益財団法人日本生産性本部によると生産性の代表的な定義を「生産諸要素の有効利用の度合いである」とし、あるモノをつくる産出にあたり投入する生産諸要素がどれだけ効果的に使われているかを割合で示したものが生産性と説明しています。算式であらわすと「生産性=産出(output)÷投入(input)」となります。ここでポイントになる生産諸要素とは何かですが、モノをつくる際に必要となる機械設備、土地、建物、エネルギー、原材料、そして人が行う労働などになります。労働生産性は、投入する生産諸要素を労働の視点からとらえたもので※1、労働者1人あたり、あるいは労働1時間あたりでどれだけ成果を生み出したかを示すものです。同じ労働量で多くのモノを生産したり、少ない労働量で同じ量のモノを生産すると労働生産性が向上した状態といえますが、これらを測るためには、おもに二つの方法があるとしています。・物的生産性…産出部分を生産するモノの大きさや重さ、あるいは個数などといった物量にしたもの・付加価値生産性…産出部分を企業が新しく生み出した金額ベースの価値=付加価値額※2にしたもの先ほどの算式にあてはめると、「労働生産性=産出(生産量/付加価値額)÷投入(労働者数×労働時間)」で労働者1時間あたりの生産性を測ることができます。この労働生産性ですが、他国と比較して低いことがしばしば報道等で指摘されています。日本生産性本部が公表している『労働生産性の国際比較2024』という資料を参照すると、2023(令和5)年の日本の1時間あたり労働生産性(付加価値生産性)は56・8ドルでOECD※3加盟38カ国中29位という状況です。主要先進7カ国※4で順位を比較したグラフで経年を確認しても、1970(昭和45)年以降日本は最下位、また2018(平成30)年21位だったものが2022年には31位(2023年29位)と近年の落ち込みが大きいのが気になるところです。また、「労働生産性・労働分配率」※1 このほかの生産性には、資本の視点からとらえた「資本生産性」や投入した生産諸要素すべてに対してどのくらい生産されたかの視点でとらえた「全要素生産性」がある※2 付加価値とは、生産額(売上高)から原材料費や外注加工費、機械の修繕費、動力費など外部から購入した費用を除いたもの※3 経済協力開発機構(OrganisationforEconomicCo-operationandDevelopment)。国際的な経済協力と発展を目的とした政府間組織のこと※4 米国・フランス・ドイツ・イタリア・英国・カナダ・日本が対象

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