エルダー2025年6月号
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エルダー49特別寄稿事例にみる大企業の高齢社員(60歳前半層)の戦力化の現状と課題事例にみる大企業の高齢社員(60歳前半層)の戦力化の現状と課題~業界における代表的な大企業10社に対するヒアリング調査結果より~~業界における代表的な大企業10社に対するヒアリング調査結果より~65歳を超えて働くことができる制度の導入については、一部の企業で実施されていたものの、今後の課題として位置づける企業が多かった。調査対象企業10社のうち、70歳までの就業確保を実施していた企業が5社、未実施の企業が5社であった。実施方法は継続雇用制度であり、70歳までの定年延長や定年廃止を行った企業、創業支援等措置を導入している企業はなかった。第2に、60歳前後での働き方の変化(65歳までの働き方)についてみると、60歳前後で働き方が大きく変わらないとする企業が5社、働き方の選択が可能な企業が4社であった。また、定年延長や役職定年制の廃止により、60歳以前と働き方が大きく変わらなくなったとする企業が複数みられた。60歳以前と変わらない働き方とするか、短日・短時間勤務などでペースを落とした働き方とするかの選択が可能な制度としている企業も複数みられた。第3に、高齢社員の処遇についてみると、調査対象10社のうち、高齢社員について、59歳までと処遇を切り替えている企業が7社、切り替えていない企業が3社であった。処遇が下がる場合は、定年前の5~8割程度となっている。ただし、従前に比べると処遇を改善し、落ち幅を小さくしたり(自動車・住宅D社)、元管理監督者動車・住宅(自動車)D社」、「自動車・住宅(住宅)E社」、「消費財・小売F社」、「生活必需品・ヘルスケアG社」、「金融サービスH社」、「エレクトロニクス・情報通信(エレクトロニクス)I社」、「エレクトロニクス・情報通信(情報通信)」J社)に対してヒアリング調査を行った三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(2023)『生涯現役社会の実現に向けた調査研究事業報告書』(令和5年度厚生労働省委託)は、大企業における高齢社員の戦力化にかかる取組みの現状と課題を明らかにしている。それによれば、第1に、65歳までの雇用確保については、調査対象企業10社すべてが実施済みであった。雇用確保の方法については、定年制を廃止した企業はなく、定年延長または継続雇用制度によるものとなっていた。また、定年制についてみると、60歳定年制が6社、60~65歳の間での選択定年制が1社、65歳定年制が3社となっていた。65歳定年制となっている企業3社のうち、E社は2013年度という早い時期に定年を60歳から延長していた。A社は2021年度に、H社は2022年度に定年を延長しており、2021年4月施行の高齢法改正が延長のきっかけとなったほか、技能継承や人材確保の必要性が延長の背景にあった。企業27・7%)や「定年制の廃止」(同0・7%、4・2%)」による実施については、中小企業のほうが大企業よりも実施率が高い状況にある。さらに、70歳までの就業の確保を目的とした「高年齢者就業確保措置」(努力義務)の実施率についてみると、70歳までの就業確保措置を実施している企業は29・7%となっている。規模別にみると、中小企業のほうが大企業よりも実施割合が高い傾向にある。上記のようなことから、65歳までの雇用確保について、現状では、定年年齢を60歳としたうえで、65歳までの継続雇用制度により実現する傾向が、特に大企業でみられることがわかる。継続雇用制度の場合は、雇用契約が有期雇用とされ、処遇などが60歳を契機に変更される可能性が高いと考えられる。いい換えれば、意欲がある高齢社員が、その能力を十分に発揮することができる仕組みの構築については取組みの途上にあるとも考えられる。高齢社員の戦力化にかかる取組みの現状と課題2筆者が参加したわが国の各業界における代表的な大企業10社(「素材・資源A社」、「産業インフラ・サービスB社」、「運輸・公共C社」、「自

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