2025.650や専門性が高い者などについては個別契約とし、現役並みの処遇となりうるという企業もみられた(産業インフラ・サービスB社、生活必需品・ヘルスケアG社、エレクトロニクスI社)。定年後の処遇を下げない選択をした企業も一部みられたが、処遇は下げつつも従来より処遇の改善を図り、さらに、高齢社員も評価対象とし成果や働きぶりによって処遇に差がつく仕組みを入れることで、高齢社員のモチベーション向上や戦力化を図ろうとしていることがうかがわれた。第4に、高齢期(60歳以降)の活躍に向けた取組み(キャリア形成支援・能力開発)についてみると、高齢期の活躍を見すえたキャリアづくりを考える機会については、中高年期以降から設けている企業が多いが、20代や30代など早期からの自律的なキャリアづくりを推進しているという企業もみられた。他方、能力開発については、調査対象企業10社においては、高齢社員も対象者に含めて能力開発を行っているという企業がある。ただし、特に高齢期に活躍するための能力開発を目的とした取組みを行っているという企業はみられなかった。「高齢社員は、定年以前に培った専門的ノウハウやスキル、および業界ネットワークを駆使して活躍(素材・資源A社)」という声もあり、高齢社員については、すでに身につけた知識や技術、人的ネットワークを用いて成果をあげることを企業は期待していることがうかがわれる。第5に、高齢社員のニーズや意見の把握(社員とのコミュニケーション)に関しては、「社員の意見を把握する仕組み(労働組合等)」と「高齢社員に関する事項についての労使協議の有無」、の2点から整理すると、以下のようになる。前者についてみると、調査対象企業10社のうち、労働組合ありは9社であった(組合なしは自動車・住宅E社)。労働組合あり9社のうち、ユニオン・ショップ制の組合があるという企業は5社(自動車・住宅D社、運輸・公共C社、産業インフラ・サービスB社、金融サービスH社、エレクトロニクスI社)、企業別労働組合は2社(素材・資源A社、消費財・小売F社)である。情報通信J社は任意加入の組合あり、生活必需品・ヘルスケアG社は一部工場に単体の組合ありとのことであった。なお、非正社員も組合員としている労働組合がある企業は3社(運輸・公共C社、素材・資源A社、消費財・小売F社)、元管理職や元役員が再加入できる労働組合がある企業は5社(運輸・公共C社、素材・資源A社、金融サービスH社、エレクトロニクスI社、情報通信J社)であった。一方、労働組合がない企業(自動車・住宅E社)においては、「人事部員がヒアリング等を通じてニーズをくみ上げている」、「中期計画策定時(3年毎)に全社員(嘱託、契約社員も含む)に人事制度全般に関するアンケートを実施し、検討の材料にしている」とのことであった。後者についてみると、労使の間で高齢社員に関する事項が取り上げられるかについては、「現時点で高齢者雇用が大きな論点として取り上げられてはいない(自動車・住宅D社、産業インフラ・サービスB社)」、「定年延長後は高齢者雇用が大きな論点として取り上げられてはいない」(素材・資源A社)」、「労働組合は定年延長について中長期で議論していきたいというスタンスを示している(運輸・公共C社)」との声が聞かれた。一方、過去の制度変更にあたっては、労使でていねいな話し合い・調整がなされていることがうかがわれた(自動車・住宅D社、運輸・公共C社、金融サービスH社)。制度設計や条件変更時は、再雇用者(非組合員)に対しても協議・ヒアリングを実施したという企業(金融サービスH社)もみられた。求められる社員が60歳を超えて活躍し続けるための仕組みづくり3社員が60歳を超えて活躍し続けるためには、
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