エルダー2025年6月号
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エルダー55給与」や「税込み年収」が減少した割合及びその減少幅のいずれも、「職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わった」場合ほど大きいのに対し、「職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わらない」場合ほど小さく、その分、「定年時と変わらない(同額)」割合が増加する傾向が読み取れる。しかしながら、「職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わらない」場合のうち、更に、週の所定労働時間の長さについても「正社員と同じか長い」者(n=157人)が「定年後の再雇用社員」の約1/4(24.4%)みられ、その約8割は「所定内給与」や「税込み年収」が「減少」と回答している。「定年後の再雇用社員」を巡っては、退職金や老齢厚生年金、企業年金・確定拠出年金等の受給を含めた総収入ベースの制度設計や、「高年齢雇用継続給付の支給要件※14」等もあり、特有の待遇取扱いが行われてきた経緯もあるが※15、定年後の再雇用であることのみを以て、直ちに待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない※16点、改めて、同一労働同一賃金ルールの周知徹底が求められる。※14  被保険者期間が5年以上の60歳以上65歳未満で、60歳以後の各月に支払われる賃金が75%未満の場合に、各月賃金の15%が支給される(60歳到達時点の賃金の61%未満で最大給付となる)が、令和7年4月1日以降は各月賃金の10%支給へ引き下げられる見通しとなっている※15  なお、男性は令和7年度以降、女性は令和12年度以降、原則65歳以上でないと年金受給できなくなることもあり、「定年後の再雇用社員」になることを理由にした、(職務の内容や人事異動・昇進の有無・範囲など働き方の変化に基づかない)賃金の大幅減額に対する労働者了承は得られ難くなるとの見方もある※16  同一労働同一賃金ガイドラインで、『定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者についても、短時間・有期雇用労働法の適用を受けるものである。このため、通常の労働者と定年に達した後に継続雇用された有期雇用労働者との間の賃金の相違については、実際に両者の間に職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情の相違がある場合は、その相違に応じた賃金の相違は許容される。さらに、有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない』とされている図表3 定年後の再雇用前後における自身の職務や働き方の変化(%)(%)(%)図表4 定年後の再雇用前後の収入の変化n (人)職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わった職務の内容のみが、変わった人事異動・昇進の有無・範囲のみが、変わった職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わらない何らか変わった計定年後の再雇用社員計64329.16.527.836.563.5週所定 労働時間の長さ20時間未満5626.87.132.133.966.120時間以上30時間未満8041.36.326.326.373.830時間以上50727.46.527.638.561.5正社員と比較した 長短正社員より短い20235.18.423.333.266.8正社員と同じか長い42026.75.530.537.462.6わからない2119.09.519.052.447.6勤め先の業種建設業4524.44.422.248.951.1製造業16023.87.529.439.460.6情報通信業6129.53.337.729.570.5運輸業5117.613.721.647.152.9卸売業、小売業6936.27.224.631.968.1金融業、保険業4045.02.535.017.582.5不動産業、物品賃貸業933.311.122.233.366.7宿泊業、飲食サービス業5--60.040.060.0生活関連サービス業、娯楽業1421.414.321.442.957.1その他サービス業7832.12.629.535.964.1教育、学習支援業1741.217.629.411.888.2医療、福祉5020.06.028.046.054.0その他4445.54.515.934.165.9わからない------サービス業計9728.94.129.937.162.9勤め先の企業規模300人以下20421.612.320.645.654.4301人以上39632.64.032.830.669.4わからない4332.62.316.348.851.2(月収のうち) 所定内給与についてn (人)60%未満に減少60%以上 70%未満に減少70%以上 80%未満に減少80%以上 90%未満に減少90%以上 100%未満に減少定年時と変わらない (同額)定年時より 増加減少計計64353.718.712.34.02.08.70.690.7職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わった18771.715.07.52.70.52.7-97.3職務の内容のみが、変わった4266.723.87.12.4---100.0人事異動・昇進の有無・範囲のみが、変わった17953.120.114.54.52.25.6-94.4職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わらない23537.419.615.35.13.417.41.780.9うち、週所定労働時間の長さも正社員と同じか長い15737.619.114.04.53.819.71.379.0税込み年収についてn (人)60%未満に減少60%以上 70%未満に減少70%以上 80%未満に減少80%以上 90%未満に減少90%以上 100%未満に減少定年時と変わらない (同額)定年時より 増加減少計計64362.213.49.04.53.47.00.592.5職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わった18778.18.69.11.62.10.5-99.5職務の内容のみが、変わった4276.211.97.14.8---100.0人事異動・昇進の有無・範囲のみが、変わった17963.715.16.76.14.53.40.696.1職務の内容も、人事異動・昇進の有無・範囲も、変わらない23546.016.211.15.54.316.20.983.0うち、週所定労働時間の長さも正社員と同じか長い15743.318.58.36.44.518.50.680.9

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