エルダー2025年6月号
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エルダー57和わ田だ秀ひで樹き 著/日東書院本社/1540円﨑さき井い将まさ之ゆき 著/河出書房新社/1078円株式会社高齢社 (監修)/宝島社/1650円65歳を超えても働く人が増えているなか、働くことへの価値観や職場でのコミュニケーションの常識は30年、40年前とは大きく変わってきている。しかし、もし定年後に新しい職場で働くことになったとき、新入社員のときのようなマナー研修を受ける機会はほぼないだろう。本書は、シニア世代が長く働くうえで大切になるのはマナーであるとして、現代の職場に適応するための身だしなみから敬語の基本、職場で避けるべきNGワード、メールやビジネスチャットの基本、働くときの心得まで、アップデートしたいマナーの基本を紹介している。例えば、かつてのリーダーも新しい職場では新人であり、若い人たちの話を聞き、学ぼうとする姿勢が求められる。そのとき、「まだまだ成長できる自分」を楽しむといった意識が持てると、結果として長く働き続けることができる「自分」や「環境」をつくることができるという。シニア派遣事業を手がける株式会社高齢社(本書監修)に登録して、実際に働いている5人のシニアへのアンケートも掲載し、定年後に働くことについての実感や、元気で働くために気をつけていることなどが回答されている。楽しく長く働きたい人にとって参考になる内容だ。現代のように医療が発達していなかった昔は、長生きする人はほとんどいなかったに違いないと、多くの人が思っているだろう…。ところが、本書によると、介護を必要とする人が江戸時代にもそれなりにいて、武士は「看病断ことわり」という名の介護休暇を取得して肉親の介護にあたっていた、などの意外な高齢者介護の歴史がいくつも解き明かされている。本書は、史料をひも解きながら、江戸時代を中心に、日本における高齢者介護の歴史を読みやすい文章で紹介している。第1章では、江戸時代の介護事情を、第2章では、江戸時代の老いに対する価値観を取り上げ、第3章から第5章にかけては、古代~中世時代の老いと介護の実情に迫り、第6章では、古代~中世期と比べつつあらためて江戸時代の介護事情をまとめている。そして、「昔の日本人も同じように介護が大変だった」と著者は綴る。江戸幕府の定めでは、高齢者の隠居を病気隠居と老衰隠居の2種類に分け、老衰隠居は70歳とされていたそうだ。現代とあまり差のない、かなり高齢の設定に驚く。このような歴史を知ることで、現代の仕事と介護を両立させるための知恵や新たな工夫がみえてくるかもしれない。著者の和田秀樹氏は、高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場にたずさわっている。そのなかで実感した一つとして、高齢になるとこれまで信じてきた常識が通じなくなることが多くあるが、それに上手に適応することが高齢期の幸せにつながるという。また、「人生をしぶとく生きる術を身に付けている人のほうが老後に適応しやすいといえる」ということも綴っている。本書は、人生の折り返し地点に立った50代に向けて、仕事、お金、他者、医療、テクノロジー、そして、過去の自分へのこだわりから自由になり、自分らしい人生を楽しむための知恵とヒントが詰まった生き方の指南書。仕事については、健康であるならば、何歳になっても働き続けることがあたり前の世の中が到来したとして、「いつかは肩書を外さないといけないという覚悟を持って長い人生で何ができるかを考える。その準備が50代こそ必要」だという。自分らしく生きることについては、「昔はできたけど、いまはできない」というマイナス思考に陥らずに、「いまの自分に何ができるか」を考え、「いまを楽しむ姿勢が大切」と強調する。高齢期に向かう心を潤してくれるような一冊だ。人には聞けない60歳からのビジネスマナー武士の介護休暇日本は老いと介護にどう向きあってきたか50歳からのチャンスを広げる「自分軸」長く働いていくために、現代に則したマナーへアップデート!高齢者介護の歴史がわかる本。「昔の日本人も介護が大変だった」高齢者専門の精神科医が示す、人生後半を自分らしく生きるヒント

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