エルダー2025年6月号
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エルダー7特集介護離職防止に向けて総 論総 論介護離職を考える介護離職を考える11「介護離職」とは家族の介護を理由に、それまで勤めていた会社を退職し、家族の介護に専念することをいいます。総務省の令和4年就業構造基本調査による「介護・看護のために過去1年間に前職を離職した者の数」が10万人前後を推移しており、大きな社会課題となっています。この「介護離職者10万人」という数字は、彼らがいまもなお働いていないわけではなく、あくまでも前職の離職理由を調査した結果、「介護・看護のために過去1年間に前職を離職した者」が10万人前後いる、ということです。介護離職は離職の一つの理由であり、離職を選択すること自体は個人の人生の選択の一つですから他人が否定すべきことではありません。ではいまなぜ「介護離職」が取りざたされているのでしょうか。日本は人口減少の渦中にあります。当然、生産年齢人口も減っています。そこで、政府はなんらかの理由で、いま働いていない人に少しでも働いてもらう対策、ならびにいま働いている人に長く働いてもらう対策を次々にとっています。その結果、近年の労働力は微増しています。総務省統計局労働力調査(2025〈令和7〉年2月分)の結果概要によると、就業者数は6768万人で前年同月に比べ40万人増加しています。これは31カ月連続の増加です。一方で「介護・看護のために過去1年間に前職を離職した者」が10万人前後を推移し続けているのはなぜでしょう。それは法律に基づく多様な対策に企業が取り組む過程において、介護離職の課題が、すべての有業者に関する「離職」、「キャリア」という視点から、要介護者を中心とした「介護」の課題解決に視点がすり替わってしまっていることが大きな原因だと考えます。仕事と介護の両立とは仕事と介護の両立とは22働いている人にとって、家族や親族に介護が必要な人がいる生活・人生は、そのかかわり方は多種あるとはいえ「仕事と介護の両立」という生活をしていることになります。その生活は突然始まることが多く、仕事と介護の両立という生活を始めずに会社を辞める人もいれば(介護離職)、仕事と介護の両立という生活の過程において、なんらかの理由でいままで勤めていた会社を退職する方や(介護離職)、仕事と介護の両立という生活を、対象家族が亡くなるまで続ける方もいらっしゃいます。このように、介護離職や仕事と介護の両立を働く人の介護離職防止に向けた現状と課題働く人の介護離職防止に向けた現状と課題一般社団法人介護離職防止対策促進機構 代表理事 和わ氣き美み枝え

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