2025.7811はじめに~日常の光景となっているはじめに~日常の光景となっているシニアの就業シニアの就業高齢者が職場で活躍している光景を日常生活のあちこちで見かけるようになりました。これは平成期に政府が進めた高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)の改正、そのなかでも2004(平成16)年改正(2006年4月施行)の高齢法が企業に義務づけた「65歳までの雇用確保措置」を受けて、希望すれば65歳まで働くことができる就労環境が整備されたことに加え、令和期に入った2020(令和2)年改正(2021年4月施行)の高齢法により、「70歳までの就業確保」の努力義務化が企業に課せられたことによるものです。高齢者雇用は70歳就業時代に向かうことになりました。前ページのマンガに出てくる、この春に人事部に異動した若木さんのように読者(新任の人事担当者を念頭に置いています)のみなさんは現在の高齢法により高齢者雇用がどのような状況にあるのかを理解するのがたいへんかと思います。そこで、総論では2020年改正・2021年4月に施行された高齢法の概要をふり返るとともに、政府統計をもとに現在の高齢者雇用における現状を確認し、70歳就業時代となった令和期の高齢者雇用の課題を考えていきたいと思います。22高年齢者雇用安定法の概要高年齢者雇用安定法の概要まず高齢法が改正にいたった背景から確認します。わが国は少子高齢化が急速に進み、2008年の1億2808万人をピークに人口は減少に転じました。こうした人口減少時代において、経済の活力を維持するには、働き手を増やすことがわが国の重要な政策課題の一つになっています。さらに、個々の労働者の特性やニーズが多様化しているなか、将来も安心して暮らすために長く働きたいと考える労働者も増えており、高齢期になっても能力や経験を活かして活躍できる環境の整備がいっそう求められています。こうした背景のもと、高齢法は2020年に改正されました。2020年に改正された高齢法(以下、「新高齢法」)のポイントは、事業主(以下、「企業」)が高齢者の多様な特性やニーズをふまえ、70歳まで就業機会を確保(「高年齢者就業確保措置」)できるよう、現行の高齢法(以下、「旧高齢法」)の規定(「高年齢者雇用確保措置」)に加え、企業に多様な選択肢を制度として整える努力義務が設けられている点です(図表1)※1。旧高齢法の規定は次の通りです。第一に企業が定年を定める場合は60歳以上としなければならないこと、第二にそのうえで65歳までの雇用機会を確保するために企業は、図表2の上段に示す三つの制度のいずれかを「高年齢者雇用確保措置」(以下、「雇用確保措置」)として設けることが義務づけられていることです。つまり、※1 なお、2012年度までに労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主は、経過措置として2025年3月31日まで老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について、継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められていたが、2025年4月1日以降は高年齢者雇用確保措置として、定年制の廃止、65歳までの定年の引上げ、希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかの措置を講じる必要がある※筆者作成図表1 新高齢法と旧高齢法の比較旧高齢法新高齢法(2020年改正、2021年4月施行)高年齢者雇用確保措置(65歳までの雇用確保措置)○(義務)○(義務)高年齢者就業確保措置(70歳までの就業確保措置)ー○(努力義務)
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