エルダー11特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門事の指示などでは高齢社員一人ひとりへの配慮が必要になります。高齢社員の戦略的活用を今後とも進めていく際には、働き方が多様化する高齢社員の健康状態に配慮した職場管理がいっそう求められること、そして、その際には高齢社員の健康状態は個人情報ですので、その保護もあわせて求められます。職場管理で重要な役割をになうのは職場管理者ですので、彼らの職場のマネジメント能力の向上が求められるとともに、職場管理者への会社のさらなる支援が不可欠です。今後とも職場で活躍する高齢社員が増えることが予想されるなか、職場管理者の職場マネジメント能力の向上と支援が高齢者雇用における新たな課題として考えられます。ではフルタイムの働き方を高齢社員は希望しますが、65歳以降の働き方は、引き続きフルタイム勤務を希望したり、働くペースを緩やかにした短日・短時間勤務を希望したりと多様化します。人口減少時代のなか人手不足により人材獲得競争はますます厳しくなります。長年の職業生活で蓄積してきたスキルや経験を持つ高齢社員は企業にとって貴重な戦力であり、おおいに頼りになります。高齢社員の戦略的活用を今後とも進めていくには、多様化する働き方に寄りそった高齢者雇用の個別施策の整備・拡充を進めることが求められます(具体的な施策については解説1~5を参照ください)。二つめは職場管理者の職場マネジメント能力の向上と支援です。高齢者雇用において避けては通れない課題の一つに高齢社員の健康管理があります。加齢にともなう身体機能の低下により、これまで問題なく遂行していた作業(例えば、身体的負担をともなう作業など)がむずかしくなったり、危険度が高まったりします。そのため、その作業を担当から外す、あるいは引き続き担当させる場合には職場・作業改善などの対応が会社や仕事を指示する職場管理者に求められます。しかも、こうした身体機能の低下や健康状態は個々人によって差がありますので、特に担当してもらう役割や仕事や日々の仕いている状況にあります。このように高齢者雇用は70歳就業時代に向けた対応が求められています。44おわりに~人口減少時代の高齢者おわりに~人口減少時代の高齢者雇用を考える雇用を考える人口減少時代となった日本の労働力人口(15 歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は1990年の6394万人から2022年の6902万人へと増えていますが、2030年には6556万人、2040年に6002万人に減少すると見込まれます※3。総労働力人口における60歳以上の労働力人口の比率は1990年の11・5%から2022年21・5%へと拡大しており※4、現在50代の団塊ジュニア世代が2030年代には60代になるので、60歳以上の労働力人口は今後とも拡大することが予想されます。人口減少時代のなかで高齢社員の戦略的活用(経営成果に貢献する戦力としての活用)が不可欠となり、70歳までの就業環境の整備が企業に求められます。そこで、最後に今後の高齢者雇用の課題として大きく2点を取り上げます。一つは、多様化する働き方に対応した雇用施策(制度や環境)の整備・拡充です。年金の受給開始年齢は原則として65歳ですので、65歳ま※3 独立行政法人労働政策研究・研修機構の推計(労働政策研究・研修機構〔2024〕「2023年度版労働力需給の推計」)。この数値は一人当たりゼロ成長に近い経済状況のもと、労働参加が2022年と同水準で推移した場合(一人当たりゼロ成長・労働参加現状シナリオ)の値。なお、経済・雇用政策を講じ、成長分野の市場拡大が進み、女性および高齢者等の労働市場への参加が進展する場合(成長実現・労働参加進展シナリオ)は、2030年に6,940万人と増加した後、2040年に6,791万人と減少すると推定している※4 総務省「労働力調査」
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