エルダー2025年7月号
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エルダー13特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11なぜ高齢者雇用制度をなぜ高齢者雇用制度を設けるのか?設けるのか?解説1では高齢者雇用の中核をになう高齢者雇用制度を紹介します。正社員は 「雇用期間の定めのない、直接企業に雇用される」雇用形態で、マンガに登場する若わか木ぎさん、大おお島しま桜ざくら部長、柏かしわ主任がこの形態です。会社で雇用されると本人が退職を申し出るまで正社員として働くことができるのですが、ほとんどの企業は定年年齢を定め、その多くが60歳としています。さらに、総論で述べたように、高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)で、65歳までの高年齢者雇用確保措置の義務化と、70歳までの高年齢者就業確保措置の努力義務化が企業に課せられているため、高齢者雇用制度を設けることが求められているのです。22高齢者雇用制度の概要高齢者雇用制度の概要高齢法で定められている高齢者雇用制度のなかで代表的な制度は「定年廃止」、「定年延長」、「継続雇用制度」の3制度です。まず定年廃止は、定年年齢を定めている定年制を廃止する制度で、高齢社員(労働者)の退職の申し出、あるいは高齢社員と会社との合意により労働契約を終了させるまで、高齢社員は働き続けることができます。定年廃止のメリットは、会社として長く働いてほしい高齢社員を雇用し続けることができること、すべての高齢社員に対して安定した雇用を保障することで本人の安心感を高められることなどです。一方、デメリットは、高齢社員の退職時期が不定となるため、人員計画が立てにくくなること、雇用契約終了時のルールなどで問題が起こることなどです。次に定年延長は、現在企業が定めている定年年齢を引き上げて、これまでと同じ雇用形態のまま雇用を継続する制度です。定年廃止との大きな違いは、これまで定められた定年年齢を廃止するか、引き上げるかの違いで、雇用形態はそのまま継続されます。定年延長のメリットは、定年廃止と同じで、デメリットは、労働条件の変更がむずかしいこと、定年延長を望まない高齢社員もいることなどです。最後の継続雇用制度は、定年に達した正社員を本人が希望すれば引き続き雇用する制度です。多くの企業で導入している代表的な継続雇用制度の再雇用制度を例にすると、雇用形態を継続する定年廃止と定年延長とは異なり、再雇用制度は定年に達した者(正社員)をいったん退職させて、契約社員、嘱託社員などの雇用形態により再び雇用する点です。継続雇用制度のメリットは、定年前後で労働条件の変更が比較的やりやすいこと、定年というラインを引くことで、一人ひとりに緊張感を持たせ、意識転換を図ることができることなどです。一方、デメリットは定年前後で労働条件を大きく引き下げると高齢社員の意欲低下につながるおそれがあること、長く勤めてほしい高齢社員であっても継続雇用の労働条件が折り合わず、定年時点で退職するおそれがあることなどです。33高齢社員活用の基本方針と高齢社員活用の基本方針と高齢者雇用制度高齢者雇用制度では、自身の会社にどのような高齢者雇用制度を整備・拡充すればよいのでしょうか。マンガの(株)JEEDホームセンターが導入している高齢者雇用制度と同じ制度(65歳定年制、希望者全員70歳まで継続雇用、基準該当者を75歳まで継続雇用)をそのまま導入する必要はありません。解説2であらためて詳しく述べますが、高齢者雇用の個別施策は、企業の経営戦略・方針のもと展開される、高齢社員活用の基本方針に沿って展開されているからです。ですので、高齢者雇用制度についても、それ単独で考えるのではなく高齢社員活用の基本方針のもと、高齢社員の就労ニーズをふまえて考えることが求められます。

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