エルダー15特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11評価・処遇制度にかかわる問題評価・処遇制度にかかわる問題~継続雇用後の高齢社員のモチベーション低下~継続雇用後の高齢社員のモチベーション低下企業の労務構成で高齢社員が大きな集団となっている今日、「高齢社員の戦略的活用」は高齢社員活用の基本方針の標準となっています。定年を迎えた高齢社員は継続雇用に切り替わっても、職場で正社員といっしょに活き活きと活躍している姿が多くの企業でみられます。しかし、その一方で定年前は活き活きと仕事に取り組んでいた社員が、継続雇用に切り替わると仕事への取組み意識が下がってしまう「高齢社員のモチベーション低下の問題」に悩まされている企業がみられます。継続雇用後の仕事内容は定年前とほぼ同じにもかかわらず、賃金などが大きく変わることへの不満がその背景にあります。さらに、継続雇用時の賃金・評価制度も正社員のそれとは異なり、高齢社員全員が同じ賃金で、評価が行われない対応がとられていることが考えられます。マンガの(株)JEEDホームセンターも以前はこのような制度だったため、高齢社員のモチベーション低下の問題に悩まされていました。そこで、解説2では賃金・評価制度の視点からこの問題を考えてみたいと思います。22人事管理の基本原則と人事管理の基本原則と賃金・評価制度賃金・評価制度賃金・評価制度を考えるには、その基盤となる人事管理の基本原則を理解することが必要です。賃金・評価制度を含め企業の人事管理の個別施策(仕組み)はそれ単独で設計されているのではなく、経営方針・戦略に基づいた人材活用の基本方針に沿って整備されます。さらに、人事管理はこの基本原則に加えて労働法制を遵守することが求められます。高齢社員の賃金・評価制度についてもこの人事管理の基本原則をあてはめて考えることが必要になり、なかでも労働法制では高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)を遵守しつつ、経営方針・戦略に基づいた高齢社員活用の基本方針に沿って高齢社員の賃金・評価制度を整備していくことが求められます。33戦略的活用の進化と戦略的活用の進化と賃金・評価制度賃金・評価制度総論で述べたように、2021(令和3)年に施行された改正高齢法は70歳までの就業機会を確保する措置を講じる努力義務を企業に課しました。このなかでは、従来の自社内での雇用確保に加えて65歳以降の就業について他社での雇用の確保などが新たに設けられました。その結果、特に65歳以降の働き方の選択肢が拡がるとともに60歳の定年後も継続雇用で10年近く働くことができるようになりました。高齢社員のモチベーションの低下問題は単に彼らだけの問題ではなく、彼らと一緒に職場で働いている正社員にもマイナスの影響を与えてしまうことになります。改正高齢法で示されているように高齢社員の就業形態には多様な選択肢がありますが、現在70歳就業を進めている先進企業の多くが実施している、自社で雇用するケースを中心に令和期における高齢社員の賃金・評価制度を考えてみると、平成期を通して多くの企業は高齢社員の活用を経営成果に貢献する戦力としての戦略的活用への転換を進めてきました。令和期における高齢社員の活用は引き続き戦略的活用を推進していくことになりますが、今後は戦略的活用の進化が求められます。つまり、正社員と同じように経営成果に貢献する役割を高齢社員にも求めることを意味します。彼らのモチベーションを維持・向上させるためにも、企業は人事管理の公平性の観点から、高齢社員にも正社員と同じように、働きぶりに応じた賃金・評価制度を整備することが必要となります※。※ 具体的な手順などについてはJEEDの「70歳雇用推進マニュアル」(2021年)をご参照ください。 https://www.jeed.go.jp/elderly/data/q2k4vk000000tf3f-att/q2k4vk000003om56.pdf
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