エルダー2025年7月号
19/68

エルダー17特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11はじめにはじめに定年前の正社員時代と同じように高齢社員に活き活きと働いてもらうためには、彼らの仕事への働きぶりを正社員と同じように評価して賃金に反映させる仕組みに見直すこと以外にも、仕事にやりがいを持ってもらうことも不可欠です。この必要性は、いまに始まったものではなく、企業は試行錯誤しながら日常的に取り組んでいます。しかし、どのような視点で行うかは時代によって異なり、近年注目されているのが「エンゲージメント」です。解説3では、エンゲージメントの視点から高齢者雇用を考えてみたいと思います。22エンゲージメントとは?エンゲージメントとは?エンゲージメント(engagement)は「約束」、「契約」などの意味を表しますが、ビジネス分野では「従業員が企業に持つ愛着や帰属意識」を意味します。このエンゲージメントには、従業員個人と仕事との関係に注目した「ワークエンゲージメント」と、従業員個人と組織との関係に着目した「従業員エンゲージメント」の二つの種類があり、「仕事への満足度」がこれらに共通します。企業と従業員は仕事を通して結びついているので、仕事への満足度を高めることが、エンゲージメントを高めることにつながります。エンゲージメントの高い従業員は仕事への関心が高く、自発的に企業に貢献するよう行動します。マンガに登場する高齢社員の桐きり野のさんは、これまでの豊富な経験や知識・ノウハウを活かし、仕事にやりがいを持って職場で活き活きと働いており、エンゲージメントの高い人にあてはまります。こうしたエンゲージメントが日本で注目されたおもな背景は、人手不足を背景にした人材の流動化です。人材確保や離職の防止には、賃金の引上げなどの労働条件の改善は有効な対策です。しかし、この対策はほかの企業も容易に模倣することができるので、資金力のない企業は不利になります。また、資金力のある企業でも、人手不足のもとでは人件費増加は続くので、経営業績の悪化につながります。その点、エンゲージメントの場合、一度それを高めると、従業員と企業の結びつきは高い状態で持続するので、離職防止につながります。こうした社会情勢のなかで、エンゲージメントは注目されるようになりました。33エンゲージメントからエンゲージメントから高齢者雇用を考える高齢者雇用を考える高齢社員が仕事にやりがいを持って、活き活きと働いてもらうためには、先に述べたようにエンゲージメントのポイントとなる(高齢社員の)仕事の満足度を高めることが重要になります。例えば、高齢社員の桐野さんのように高齢社員が持つ豊富な経験や知識・ノウハウを活かせる仕事や役割(後進育成など)、解説4で登場する新設部署に異動し新しい仕事に挑戦している高齢社員の木もく蓮れんさんのように、新たな役割や仕事を高齢社員に担当してもらうことです。その際には、総論で述べているように高齢社員の戦略的活用のもとで、高齢社員に担当してもらう仕事や役割を明確にすることが必要です。高齢社員の役割を明確にすることは、高齢社員への企業の期待を意味しますので、自身の役割が明確化された高齢社員は仕事への満足度が高まり、活き活きと働けるのです。役割の明確化は定年前の正社員にもあてはまり、社員のエンゲージメントを高めている企業では行われています。読者の企業で役割の明確化を定年前の正社員に行っているのであれば高齢社員にも行うこと、行っていない場合は高齢社員だけではなく、社員全員に行うことが求められます。

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る