エルダー2025年7月号
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エルダー19特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11求められる自律したキャリア形成求められる自律したキャリア形成解説2と3では、高齢社員に活き活きと活躍してもらうための課題を評価・賃金制度と最近注目のワークエンゲージメントから考えてみました。高齢社員に活き活きと活躍してもらうには企業がその環境を整備・拡充するだけでは十分ではありません。マンガに登場する、デジタルの知識・スキルを猛勉強して習得し、自分の経験を活かしていた部署から新設の部署に異動して新しい仕事に挑戦している高齢社員の木もく蓮れんさんのように、高齢社員は継続雇用後も引き続き活躍する意識(キャリア自律)を持ち、業務に必要な知識・スキルや技術を習得してもらうことが必要になります。そこで、解説4では、キャリア自律を考えてみたいと思います。22キャリア自律が求められる背景キャリア自律が求められる背景~変わるキャリア形成のあり方と戦略的活用~変わるキャリア形成のあり方と戦略的活用高齢者雇用を取り巻く環境が変化し、高齢社員活用の基本方針を戦略的活用に転換することが不可欠であることを総論で述べました。平成期の実質65歳定年制(60歳定年+希望者全員の65歳までの継続雇用)では管理職を目ざした「のぼるキャリア」のもと、継続雇用の5年間をこれまでつちかってきた経験やスキルを活かす「いまある能力をいま活用する(現有能力の活用)」ことが企業にとっても高齢社員にとっても合理的でした。しかし、少子高齢化にともなう組織運営上の観点から大企業を中心に役職定年制が導入されるようになり、キャリア形成のあり方が定年前に役職を離れる「くだりのあるキャリア」へと変わり、役職定年後に一般社員などとしての就業期間が10年(役職定年を55歳とした場合)に延びました。「10年」の期間には社会をはじめ市場や技術は変化・進化しますので、現有能力の活用では継続困難となります。役職定年制を実施している企業は、高齢社員の戦略的活用を修正し、現有能力の更新に向けたキャリア教育や教育訓練体系の整備などのキャリア支援体制の拡充を進め、高齢社員にはキャリアの自律を求めました。2020年の高齢法改正により、今後は就業期間の延伸が進むことが考えられ、「のぼるキャリア」は継続困難となります。役職定年制の導入が多くの企業で広がるとともに、それにともなうキャリア形成のあり方も「くだりのあるキャリア」への転換が予想されます。役職定年後の就業期間を「15年」とすると、現有能力は更新ではなく進化が必要となり、企業にはそれに対応するキャリア支援体制のさらなる拡充が、高齢社員には経営成果に貢献する戦力としてのキャリアの自律がいっそう求められるようになったのです。33高齢社員のキャリア自律に向けて高齢社員のキャリア自律に向けて~経営成果に貢献する戦力として~経営成果に貢献する戦力として高齢社員が企業の経営成果に貢献する戦力として活き活きと活躍し続けるためには、管理職(正社員)のときから準備しておくことが必要になります。例えば、役職定年や定年後のキャリアのあり方をベテラン社員になる前の早い段階から考えるキャリア研修をはじめ、役職定年後も一般社員などで活躍するために必要な業務スキルや知識の習得・向上です。さらに、継続雇用後も高齢社員の木蓮さんのように職場で活躍するには、業務スキルや知識を磨いておくことが必要になります。そのため、管理職や高齢社員が業務スキルや知識の習得・向上を図るための研修を受講できる教育訓練体系の見直しや拡充を進めること、高齢社員だけではなくすべての社員が自らキャリア自律をうながし、「学び直し」や「リスキリング」などの新しい知識やスキルを身につけるための自己啓発支援の拡充や、キャリアサポートの整備・拡充が企業に求められます。

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