エルダー2025年7月号
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エルダー21特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11働き方の多様化と柔軟な勤務制度働き方の多様化と柔軟な勤務制度正社員の勤務制度は「1日8時間、週休2日制」による「フルタイム勤務」が読者の一般的な認識ではないでしょうか。これは労働基準法(第32、35条)に基づいたもので、昭和期を通して標準的な勤務制度となりました※1。しかし、平成期に入ると、ライフスタイルの変化や就労意識・ニーズの多様化を背景に、政府は働く人が個々の事情に応じて多様で柔軟な働き方を自ら選べるようになるための働き方改革を推進しました。それを受けて企業はフルタイム勤務の勤務制度に加えて、柔軟な勤務制度の整備に取り組むようになりました。そこで、解説5では柔軟な勤務制度を取り上げていきたいと思います。22柔軟な勤務制度ー三つのタイプ柔軟な勤務制度ー三つのタイプ柔軟な勤務制度は大きく三つの種類に分かれています。一つめは柔軟な「勤務形態」で、フルタイム勤務に比べ勤務日数や勤務時間を短くした「短日・短時間勤務」が代表的な勤務形態です。マンガの(株)JEEDホームセンターでも導入されています。二つめは柔軟な「労働時間制度」です。読者の多くは会社から定められた始業時間と終業時間のもとで仕事をしていますが、この始業時間、終業時間を仕事の進捗状況や、例えば、マンガに登場する銀いちょう杏さんのような家族の介護、育児中の社員の場合は子どもの送り迎え、社員自身の病気治療のための通院など、個人的な事情によって社員が柔軟に決める勤務制度で、「フレックスタイム制」が代表的な制度です※2。三つめは、「働く場所」の柔軟化です。外回りの営業や建設現場などの会社外で仕事に従事する職種もありますが、通常、従業員は仕事をするために会社に出勤しています(出社勤務)。デジタル化が進展するなか、新たな働き方として在宅勤務(テレワーク)が情報サービス業や裁量労働制が適用されている社員を中心に拡がりましたが、社会全体からみると限定的でした。しかし、令和期の新型コロナウイルス感染症対策として産業全体に拡がり、収束後は育児や介護などのライフスタイルの多様化に対応する働き方として位置づけられるようになりました。33高齢社員の柔軟な勤務制度を高齢社員の柔軟な勤務制度を考える考えるこのように柔軟な勤務制度を導入することは、自身の病気治療や家族の介護などライフスタイルが多様化する高齢社員にとっても、会社にとってもよい動き(変化)です。マンガでは、家族の介護で早退や欠勤をくり返している銀杏さんが、安心して働くことができるように、短日・短時間勤務制度や在宅勤務制度について説明し、利用をすすめました。柔軟な働き方を取り入れることで、高齢社員にとっては家庭の事情で退職せずに働き続けることができますし、人手不足に悩まされている会社にとっても経験やスキルを持つ戦力(高齢社員)を失わずにすみます。高齢社員の就労ニーズにあわせて選択できる多様で柔軟な働き方の実現に向けて、マンガの(株)JEEDホームセンターのように短日・短時間勤務や在宅勤務などの柔軟な勤務制度を設けることが求められます。また、こうした多様で柔軟な働き方を求めるニーズは高齢社員だけではありません。フルタイム勤務をしている定年前の正社員にも育児や親の介護、自身の病気治療の健康問題など、さまざまな事情を抱えている人がいます。マンガの(株)JEEDホームセンターのように柔軟な勤務制度は、高齢社員だけに限定せずにすべての社員に広く適用することが求められます。※1 勤務制度の基本原則の詳しい解説は、本誌2024年7月号特集「【解説2】多様で柔軟な働き方の実現に向けて」をご参照ください。   https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder/book/elder_202407/index.html#page=18※2 このほかにも変形労働時間制、裁量労働制等がある

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