エルダー25特集新任人事担当者のための高齢者雇用入門11社員の健康づくり支援が社員の健康づくり支援が企業価値の向上に企業価値の向上に高齢社員の健康・体力の維持増進は、個々人の働きやすさを確保するための源泉であるとともに、企業の生産性や組織活力の維持に直結する重要な取組みです。企業や個々の職場において、積極的に社員の健康づくりを支援することは、「健康経営」※の実践としての意義を持ち、企業価値の向上にもつながります。まず、企業が取り組むべき基本的な取組みとして「身体活動につながる機会の創出」、「適切な健康情報の発信」、「生活習慣改善の働きかけ」の3点があげられます。なかでも「身体活動につながる機会の創出」は、加齢にともなう筋力や柔軟性の低下、生活習慣病のリスク上昇を抑えるうえで不可欠であり、高齢社員のみならず、全社員に対して取り組むべき課題です。22健康意識の高まりが健康意識の高まりがウェルビーイングを向上ウェルビーイングを向上具体的な取組みとして、職場・事業所レベルにおいては、就業時間中に短時間のストレッチや軽い運動を取り入れる「職場体操」などの導入、始業前や昼休みに実施可能な身体活動(ウォーキングや軽スポーツなど)の支援があげられます。企業レベルでは社内外のフィットネス施設との連携など、日常のなかに取り入れられる仕組みづくりが効果的です。さらに、個々人の身体活動に対するモチベーションを高めるためには、それぞれの体力水準に合わせた適切な運動プログラムを提供することが肝要です。その方策として、健康診断などと組み合わせて、体力測定や運動機能チェックを実施し、その結果をもとにパーソナライズされたアドバイスの提供、現状の身体活動量(歩数や心拍数など)を知るための計測機器(万歩計やスマートフォン・アプリ、専用のウェアラブル・デバイスなど)を提供する取組みも有効です。「適切な健康情報の発信」も重要です。社員が自らの健康課題に気づき、主体的に行動を起こすためには、信頼できる情報を継続的に受け取ることができる環境が大切です。例えば、社内ポータルサイトや掲示スペースを活用し、生活習慣病予防、転倒防止、睡眠の質向上、栄養バランスなどのテーマで定期的に情報を発信し、多くの社員へ届ける取組みがあげられます。また、健康相談に関する窓口の設置や産業医・保健師との面談機会の拡充なども気軽に健康について相談できる環境づくりとして有効です。こうした取組みは、「生活習慣改善の働きかけづくり」につながり、社員の健康・体力の維持増進、さらに企業の生産性や組織活力の維持に寄与します。すなわち、職場における健康づくりは、単なる福利厚生の一環にとどまらず、「健康経営」の実践と位置づけることができます。健康経営とは、社員の健康を企業の重要な経営資源ととらえ、戦略的に健康づくりに取り組むことで企業の生産性向上や持続的成長につなげていこうとする経営手法です。特に少子高齢化が進行するわが国にとって、中高齢期の社員の健康維持は、職場の生産性や組織活力の維持のための欠かせない条件であり、企業としてその支援を行うことは、労働力の安定的な確保や経験知の継承にもつながります。加えて、職場における健康意識の向上は、若年層社員にも大きな波及効果をもたらし、組織全体のウェルビーイング向上にも寄与します。総じて、企業が高齢社員に対して身体活動の機会や適切な健康情報の提供を積極的・効果的に行うことは、個人の健康保持だけでなく、組織の活力維持と持続的発展に資する戦略的な取組みです。今後ますます進む高齢化社会において、健康経営を実践し、年齢にかかわらずすべての社員が活き活きと働ける職場づくりが求められています。小さな取組みからでも構いませんので、健康経営としての健康づくりを推進していってください。※ 今号の「リーダーズトーク」(P.1〜)で、「健康経営」を提唱するNPO法人健康経営研究会理事長の岡田邦夫さんをご紹介しています。あわせてご覧ください
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