エルダー2025年7月号
48/68

2025.746999年の生存期間の平均値は、8・9カ月でした。徐々に、生存期間が延び、2015〜2019年に診断された方は、25・2カ月と約3倍に延びていること、2020(令和2)年以降に診断された方は、さらに延びていることが報告されました(文献3)。4がん治療の進歩と就労このような医療の進歩により、がんの平均在院日数(35〜64歳)は、1996年の31・0日から2020年の13・3日と半減しました。同じくがんの外来患者数は2005年に入院患者数を上回りました(図表3/文献3)。治療の変化により働ける状態の患者が増えており、がん治療をしながら就労継続を希望する割合も増えています。特に薬物療法をしながら、働く人が増えています。がん治療の主要な方法は、手術、放射線療法、薬物療法です。ここでは、就労と継続することが多い薬物療法と放射線療法を特に取り上げます。薬物療法は、おもに内服と点滴に2分され、化学療法、ホルモン療法、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを組み合わせて行われています。点滴投与では、太い静脈にカテーテルを挿入し、皮膚の下にポートを埋め込んで、継続して化学療法を受けられるようにすることが多くなります。近年は長時間投与や多剤併用をする療法が増え、中心静脈ポートを留置するケースが増えています。頻度が多い薬物療法をご紹介すると、2〜3週に1度、外来で数時間かけて点滴治療を行い帰宅します。外来での点滴を終了後も薬剤を持続注入できるポンプ(たばこの箱より少し大きめのケース)を約2日間装着する治療です。通常の生活や入浴を制限する必要もありません。副作用がなければ、薬剤を持続注入している状態で、仕事に従事している人もいます。点滴をしながら仕事をすることに驚かれる患者さんや職場の方もいらっしゃいますが、就労することで治療の効果を下げることはありません。就労に支障が出る副作用がなければ、問題なく就労することができます。また、副作用が出るタイミングと通院の日のみ休んで、そのほかの日に働いている方もいます。これらの薬物療法により、就労現場で遭遇することが多い副作用とその対応についてまとめたものが図表4です。副作用は個人差が大きいため個別対応(本人のケアと職場での理解・配慮の組合せ)が必要です。みなさまの職場でこのような症状がある方が就労するとき、どんな支援が可能でしょうか。イメージしていただき、環境整備やルールづくりなど、必要な方策を職場で検討いただくとよいかもしれません。※厚生労働省令和5(2023)年「患者調査」より筆者作成図表3 がんの推計入院外来患者数の推移(35~64歳)(千人)(年)0102030405060199920022005200820112017201420202023外来入院

元のページ  ../index.html#48

このブックを見る