エルダー47費であれば医療費の自己負担金額は○万円」とは、いえません。医療費は薬剤費だけでなく、血液検査や画像検査、遺伝子パネルの検査の費用などもかかります。月額の医療費を外来でたずねると、月4〜8万円程度の医療機関や薬局での支払いをされている方は珍しくありません。継続してかかる費用ですので、負担を感じる方が多いです。治療費を負担なく支払うためにも就労を希望する方もいらっしゃいます。さて、連載第1回目として、がんの罹患率やがん治療の多様化、副作用について触れました。第2回目に仕事の両立しやすさの現状や具体的に企業に求められる取組み、第3回目に実際に両立支援者が出た場合の進め方等とそのポイントをご紹介いたします。最後に、放射線療法についても触れておきます。放射線療法は連日短時間の照射を行うのが一般的で、毎日の通院が必要となります。しかし、朝一番や夕方最後の時間帯に照射スケジュールを調整することで、就労との両立を図ることが可能です。副作用が軽微な場合には、治療を継続しながら半日勤務などの働き方を選択される患者さんも多くいらっしゃいます。5支援の視点ここまでご紹介したように、がん治療をしながら働く人の支援は、治療法も多様であり、症状の個人差も大きいため個別対応が必要です。本人が行うセルフケアと職場での理解・配慮を組み合わせ、定期的な症状モニタリングと治療状況の確認が重要となります。治療のスケジュールや治療によって生じる副作用、日常生活の留意点を本人を通じて医療機関に確認してください。医療機関、職場、本人の三者連携により、治療と就労の両立を模索することが求められています。また、これらの医療の進歩、先ほどご紹介した新しい治療薬を利用する場合など、薬剤費が高額となっている印象があります。本人の収入に合わせて、高額療養費制度などの制度が設けられ、自己負担割合が異なるため、「この治療【参考文献】〈文献1〉国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録生存率集計」https://hbcr-survival.ganjoho.jp/〈文献2〉がん診療連携拠点病院等院内がん登録2015年3年生存率集計報告書https://ganjoho.jp/public/qa_links/report/hosp_c/hosp_c_reg_surv/pdf/hosp_c_reg_surv_4_2015.pdf〈文献3〉Yoshida,K.,Watanabe,K.,Nishimura,T.,Ikushima,H.,Ohara,S.,Takeshima,H.,...&Usui,K.(2025).ImprovementinSurvivalinPatientsWithAdvancedNon-smallCellLungCancer.AnticancerResearch,45(1),295-305.※筆者作成図表4 就労現場で遭遇することが多い薬物療法の副作用とその対応具体的な症状本人のケア/職場の対応疲労・体力低下疲れやすさがん患者が最も経験する症状で、活動量と休息のバランス調整が重要である。職場では就労時間短縮、段階的復帰、休憩環境の整備が有効である。認知機能の低下短期記憶の低下 集中力の低下口頭からメールや文書で作業指示をする。メモを活用するなどの自己対応が必要である。末梢神経障害手足のしびれ感覚障害冷所や冷温のものを取り扱うと症状が強くなることがある。パソコン作業や細かい動作に支障をきたす。保温や指先運動で症状が和らぐことがある。消化器症状悪心・嘔吐、下痢・便秘頻度が高い副作用である。予防的な服薬管理と食事環境の配慮が重要。見た目の変化頭髪、眉毛の脱毛爪や皮膚の変化ウィッグや帽子の準備、職場でのプライバシー配慮が就労継続に重要である。皮膚障害発疹、色調の変化など保湿剤の塗布。直射日光にて悪化することがある。排尿障害尿漏れなど排尿障害では、デオドラント効果のある尿取りパッドの使用、自己導尿といった自己対応が必要である。トイレに行きやすい環境の整備があると就労継続しやすい。
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