エルダー2025年7月号
50/68

労働条件は、労働契約、就業規則、労働協約その他労使慣行となっている内容などがあるところ、これらにより定められた内容を変更するにあたっては、労働条件の不利益変更となることが多く、労働者の同意または変更の合理性が求められることになります。労働条件には、賃金や退職金など重要な労働条件を含むことも多く、そのような場合には、合併による労働条件の統一の必要性が認められるとしても、労働者の自由な意思による同意を得ておくことが重要と考えられています。自由な意思による同意については、その判合併と労働契約の関係1会社の合併によって、二つ以上の会社が一つの会社に統一されることがあります。このとき、二つの会社における労働条件が、まったく同一であるとはかぎりません。他方で、合併により、吸収する存続会社の労働条件にすべて自動的に統一されるような法制度も存在していません。そのため、労働条件の統一については、労働基準法、労働契約法などの規定に従って、順次進めていかなければなりません。合併による労働条件の統一については、変更の合理性が認められやすい傾向にあります。継続雇用に関する労働条件の提示についても、合理的な範囲であれば許容されるものと考えられ、これに応じなかったことによる更新拒絶は有効になることがあります。A会社が吸収合併されることになった場合、継続雇用の条件が変更になることは不利益変更にあたるのではないか継続雇用されていた会社が、吸収合併により消滅してしまい、合併後の会社で雇用が維持されることになりました。合併時の説明によれば、2社の間で継続雇用の条件が異なることから、次回の継続雇用の満了時に条件変更があるようですが、従来の契約とは大きな差があり納得がいきません。提示される条件にしたがわなければならないのでしょうか。Q1第85回 合併後の再雇用拒絶、総合職のみに限定した社宅制度の適法性 人事労務担当者にとって労務管理上、労働法の理解は重要です。一方、今後も労働法制は変化するうえ、ときには重要な判例も出されるため、日々情報収集することは欠かせません。本連載では、こうした法改正や重要判例の理解をはじめ、人事労務担当者に知ってもらいたい労働法などを、Q&A形式で解説します。弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲/弁護士 髙木勝瑛2025.748知っておきたい労働法A&Q

元のページ  ../index.html#50

このブックを見る