2025.88図表2 高齢社員の人事制度の設計思想出典:藤波美帆(2024)「高齢社員の戦略的活用を促す人事」日本経済団体連合会『月刊経団連』、著者が一部改変高齢社員の活用範囲選抜型(選抜基準がある)全員型(選抜基準がない/希望者全員)高齢社員の活用の程度正社員と同様の活用(本格活用)を求めるⒶ選抜型/本格活用Ⓒ全員型/本格活用正社員とは異なる活用(限定活用)を求めるⒷ選抜型/限定活用Ⓓ全員型/限定活用型)、選抜型・限定活用(B型)、全員型・本格活用(C型)、全員型・限定活用(D型)─に分類されます。高年齢者雇用安定法の改正により「高年齢者雇用確保措置」が講じられる2000年代以前には、定年(60歳)以降も雇用されるのはかぎられた社員のみであり、選抜型・本格活用(A型)が主流でした。その後、希望者全員の雇用確保が段階的に義務化されるにつれ、多くの企業は法対応と人件費管理の両立を図るため、制度上の要件を満たしやすい全員型・限定活用(D型)を選択しました。しかし、D型は雇用確保には効果がある一方で、活用面における限界が顕在化し、60歳以降の社員数の増加にともない、より実質的な活用を目ざして全員型・本格活用(C型)へ移行する企業も増えつつあります。ただし、人事制度の設計思想と実際の運用実態は必ずしも一致するとはかぎりません。例えば、人事制度上は本格活用を前提とするC型を採用していても、現場では補助的な役割しかになわせていない場合や、D型のもとで正社員時代と同じ働き方や成果を暗黙的に期待されている例も見受けられます。こうした乖離を可視化し、是正していくためには、制度類型とは別に「マネジメントタイプ」に着目することも必要を戦略的に組み込む視点が必要になります(7ページ図表1)。高齢社員の多様性を活かすことを前提とした人材マネジメントと、組織の持続的成長を両立させる制度の再構築が、これからの人的資源管理において欠かせません。高齢社員をどう活かすか高齢社員をどう活かすか ―― 制度の制度の設計思想とマネジメントタイプの整合設計思想とマネジメントタイプの整合2高齢社員の活用を考えるうえで、まず注目すべきは、人事制度の根幹をなす「設計思想」です。多くの企業が「一国二制度型」を採用している現在、高齢社員をどのように位置づけ活用するのかは、もはや制度設計における枝葉の問題ではなく、企業の人材戦略の中核に位置づけられるべき重要な課題となっています。こうした課題に対応するには、人事制度全体に通底する設計思想、すなわち「だれを、どこで、どのタイミングで、どの程度活用するか」という視点を明確にすることが求められます。高齢社員の人事制度の設計思想では、「どこで」は「引き続き自社内で」、「どのタイミングで」は「定年(60歳)以降に」という点が前提として共有されているため、①対象者の範囲「選抜型か/全員型か」、②活用度合い「正社員と同様か/限定的か」という2軸で整理でき(図表2)、四つの制度類型─選抜型・本格活用(A
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