エルダー11特集高齢者雇用と賃金の基礎知識解説1はじめにはじめに会社が社員の賃金を決める際、ほかの会社がどうしているのか、というのは気になる部分です。特に高齢社員の賃金は、法令の改正などによりその働き方を見直す会社も増えていることから、気になる会社は多いことでしょう。そこで、本稿では、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」や国税庁「民間給与実態統計調査」などをもとに、60歳以上の高齢社員を中心にその賃金の推移や現状について見ていきます。2賃金構造基本統計調査から見る賃金構造基本統計調査から見る高齢社員の賃金高齢社員の賃金まず、全体との比較で高年齢労働者の賃金を見ていくと、2024(令和6)年の「賃金構造基本統計調査」では、全体の賃金の増減率は3・8%(賃金の平均は33・04万円)となっており、前年の2・1%(平均賃金31・83万円)や、マイナス1・0%から1・5%で推移していた2000年代以降と比較しても非常に高い上がり幅となっています。では、こうした上がり幅と比較して、高年齢労働者の賃金はどうかというと、2024年の60~64歳の増減率は前年から3・9%増(平均賃金は31・77万円)と、全体の増減率とほとんど変わりません。しかし、過去10年の60~64歳の平均賃金と上がり幅の推移を見ると、基本的に、60~64歳の賃金の上がり幅は全体の上がり幅より大きくなっており、全体の賃金の上昇よりも早いペースで賃金が上がってきたのがわかります。一方、65~69歳については、増減の振れ幅が大きく、傾向をつかむことがむずかしい各種調査から見る高齢社員の賃金の実態各種調査から見る高齢社員の賃金の実態社会保険労務士川嶋事務所 所長 社会保険労務士 川かわ嶋しま英ひで明あき1ですが、トータルで見ると、徐々に上がっているのは間違いありません(12ページ図表1)。さて、60歳以上の労働者、特に60歳到達まで正社員として働いていた労働者に関しては、60歳で定年後再雇用され、その際に、賃金が大きく引き下げられるのが一般的です。そのため、60歳到達前と60歳以降の賃金の比較についても見ていくと、まず2024年にかぎっていえば、55~59歳の賃金の増減率は4・1%と60~64歳よりも上がっています。ただ、過去10年で見た場合、55~59歳の賃金の増減率は、全体の増減率を下回ることが多く、結果、この10年で55~59歳の賃金と60~64歳の賃金の差は縮小してきました。次に、高年齢労働者の男女の賃金差について見ていくと、全体の男女の賃金差自体は年々縮小傾向にあるものの、いまでも、女性の賃金は
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