2025.812図表1 過去5年間の高年齢労働者等の賃金の推移※ 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに筆者作成20令和2年令和3年令和4年令和5年令和6年40(万円)(%)353025−2−1542301全年代(平均賃金)全年代(前年比)55〜59歳(平均賃金)55〜59歳(前年比)60〜64歳(平均賃金)60〜64歳(前年比)65〜69歳(平均賃金)65〜69歳(前年比)になっています。これは大企業ほど、60歳で定年後再雇用し、その際に賃金を大きく引き下げる雇用慣行を行う一方、中小企業では定年延長や定年後再雇用をともなわない継続雇用などにより、60歳以降も60歳到達前の賃金のまま働くケースが多いためと見られます。3民間給与実態統計調査から見る民間給与実態統計調査から見る高齢社員の賃金高齢社員の賃金最後に、国税庁「民間給与実態統計調査」をもとに、産業別の賃金を見ると、60歳到達前(55~59歳)と60歳以降(60~64歳)で賃金に大きく差が出る産業とそうでない産業があるのがわかります(13ページ図表3)。60歳以降で賃金が大きく下がる典型的な産業は、電気・ガス・熱供給・水道業で、60歳到達前の53・6%、郵便局や協同組合などが含まれる複合サービス事業も下がり幅が大きく51・4%となっています。これらの業種は行っている業務がインフラかそれに近いこともあって、安定的に業務があったり、もともとの賃金額も大きかったりすることから、定年を機に賃金を大きく下げたいという会社側の思惑が反映されていると見ることができるでしょう。これらほどではありませんが、金融業・保険業や情報通また、男女の賃金差は各年代によっても開きがあり(13ページ図表2)、20代までは男女でそれほど差がない一方、30代以降はどんどん差が拡大し、その差がもっとも拡大するのが55~59歳のときで、このとき、女性の賃金は男性の66・2%にまで落ち込みます。ただ、60歳以降になると、両者の格差は大幅に縮小し、その割合は75・4%となりますが、これは前述した、定年後再雇用によって賃金が大きく下がる人が男性に多いからでしょう。定年後再雇用の影響は60歳以降の非正規労働者の賃金にも影響を与えています。というのも、男女ともに55~59歳の非正規労働者の賃金よりも、60~64歳の非正規労働者の賃金の方が高いどころか、男女ともに非正規全体で見ても賃金のピークとなっているからです。このことから、もともと非正規で働いていた労働者よりも、定年後再雇用で非正規になった労働者の賃金の方が高いことがうかがえます。企業規模別の賃金の傾向についても見ていくと、大企業ほど賃金が高いことはみなさんも想像がつくところだと思いますが、一方で、60歳到達前に対する60歳以降の賃金の割合は、企業の規模が大きくなるほど広がり、2024年の結果では、小企業で91・5%、中企業では82・3%のところ、大企業では73・5%という結果男性の75%前後に留まります。これは2024年の統計でも同様で、全体の平均賃金が男性は36・31万円、女性が27・53万円で、割合にすると女性は男性の約75・8%となります。
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