エルダー2025年8月号
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解説1労働基準法における賃金労働基準法における賃金労働基準法における賃金とは「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如いかん何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。つまり、賃金の名称が何であれ、それが労働の対償として支払われるかぎり、労働基準法においてそれは賃金となるわけです。では、賃金の支払方法や決定方法はどうかというと、支払方法に関しては、労働基準法では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められている一方で、決定方法については特に定めはありません。もちろん、支払う賃金額は最低賃金を下回ってはいけませんし、時間外労働や深夜労働などがあった場合には、法定の金額以上の手当を支払う必要はありますが、最終的に支払う金額がそれらを下回らないかぎり、賃金の決定方法は基本的に会社と労働者の取決め次第となるわけです。とはいえ、それは会社の都合によって労働者の賃金を自由に変更することができることを意味しません。賃金をはじめとする労働条件は、会社と労働者の合意によって決まるものですし、両者の合意によって決定した労働条件を、会社が労働者にとって不利益な形で変更(労働条件の不利益変更)する場合、原則として、個々の労働者の合意が必要となるからです。実際、過去の裁判例を見ても、会社の都合で賃金を引き下げたり、手当を削減したりといった対応には、厳しい判断が散見されます。つまり、賃金には下方硬直性があり、簡単には下げられないわけですが、日本の雇用慣行では、まだまだ年功序列的な賃金形態であることが多く、賃金は年齢とともに徐々に上がっていき、役職定年などを除けば、下がることはないのが一般的です。一方、定年後再雇用では、従来の賃金体系を見直し、新たな雇用条件を設定する契機となることが多く、また、その際、賃金水準が現役時代よりも低くなるケースが少なからず見られ定年後再雇用社員のモチベーションの低下といった課題が生じています。2定年後再雇用と定年後再雇用と同一労働同一賃金同一労働同一賃金労働者が定年退職を迎え、その後再雇用される場合、いままでの労働契約は終了し、新たな労働契約を結び直すことになりますが、あくまで新しい労働契約であるため、定年前の契約よ賃金の法的位置づけと同一労働同一賃金賃金の法的位置づけと同一労働同一賃金2社会保険労務士川嶋事務所 所長 社会保険労務士 川嶋英明2025.814

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