エルダー15特集高齢者雇用と賃金の基礎知識ことは問題ないわけです。また、所定労働時間や所定労働日数に相違がある場合に、所定労働時間に比例して手当の額を比例させたり、所定労働日数に応じて通勤手当の支払方法を実費とするか定期代支給とするかを変えたりといった対応も、均衡待遇に含まれます。以上のように、均等待遇が必要か、均衡待遇が必要かは「前提条件」が同じかどうかで変わってきます。ここでいう前提条件とは、賃金項目や手当ごとの「支給目的」と、職務内容や人材活用の仕組みなどの「就労条件等の相違」がこれにあたります。4同一労働同一賃金に基づく同一労働同一賃金に基づく賃金の見直し賃金の見直しこの二つのうち、特に注意が必要なのは支給目的の方です。というのも、日本の雇用慣行では、手当の支給目的を深く考えず、正規だから支給する、非正規だから支給しない、という扱いをしている会社が少なくないからです。しかし、諸手当の支給目的を明確に定義してみると、正規と非正規で差を設けるに足る理由がないことがあります。つまり、同一労働同一賃金において、不合理な格差が生じてしまっている会社も少なからずあるということです。一方、就労条件等の相違については、そもそや所定労働日数のほか、職務内容や職責などの就労条件等の相違があることが一般的で、またそうした違いに応じて待遇に差を設けることはある意味当然といえるからです。そのため、正規と非正規の働き方の違いなどに応じて、待遇に差を設けること自体に問題はありません。同一労働同一賃金において重要なのは、労働条件等の相違とその待遇差が「釣り合って」いることです。この釣り合いを考えるうえで重要となるのが「均等待遇」と「均衡待遇」です。均等待遇とは、正規と非正規の前提条件が同一の場合、同一の取扱いをすることをいいます。例えば、「役職に就く」ことを前提に役職手当を支払うなら、役職に就いている者に対しては、正規・非正規の雇用形態に関係なく役職手当を支払う必要があります。役職に就くことが前提条件となっているわけですから、その前提条件と関係のない、正規・非正規といった雇用形態などを理由に差を設けることはできません。一方、均衡待遇とは、正規と非正規で前提条件に異なる部分がある場合、その違いに応じた取扱いをすることをいいます。例えば、基本給について、正規と非正規で職務内容や職責、人材活用の仕組みといった、基本給を決定するうえで前提となり得る部分に相違があるのが普通ですが、そうした相違に応じて待遇差を設けるりも賃金が下がったとしても(労働者側が新たな労働契約内容に十分に納得したうえで同意していることが前提)、それ自体が労働条件の不利益変更にあたるというわけではありません。一方で、定年後再雇用者については、再雇用時の契約が有期雇用であったり、定年前よりも労働時間が短縮されたりするなど、非正規労働者となるケースは少なくありません。有期雇用労働者や短時間労働者などの非正規労働者は同一労働同一賃金の対象であり、もともと正社員で、定年後再雇用を機に有期雇用労働者や短時間労働者となった者も例外ではありません。そのため、定年前の労働条件や待遇と、定年後再雇用となった際の労働条件や待遇との間に、不合理と認められるような格差がある場合、それは「正規と非正規の格差是正」の対象であり、いわゆる「同一労働同一賃金」のための適切な対応が必要となります。3同一労働同一賃金の概要同一労働同一賃金の概要日本の同一労働同一賃金では、正規と非正規の格差を是正することを目的としていますが、正規と非正規との間に基本給や手当などに待遇差を設けることを禁止しているわけではありません。そもそも正規と非正規では所定労働時間
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