エルダー2025年8月号
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解説1等級制度とは何か等級制度とは何か「等級制度」とは、従業員の職務遂行能力や職務の大きさ、役割などに応じて序列化のうえで格付けし、それに応じた処遇(賃金や昇格など)を決定する枠組みです。日本企業では長く終身的雇用を前提とした一社固有の「職能資格制度」が主流でした。しかしながら、年功的、勤続功労的な運用に流されていたというところが否めなかった部分があります。特に中小企業では体系的な制度として整備されていなかったり、形骸化して属人的な運用になっていたりすることも見受けられます。現在、急速な少子高齢化や経営環境の変化により、成果や役割に応じた公平な処遇への転換が求められてきています。等級制度は、単に「賃金のランク区分」に留まるものではなく、個々の従業員の成長や活用していくための基盤として、組織力の強化にも結びつく重要な制度です。あわせて、近年は人材としての投資や競合他社との競争力強化、さらには若年層の定着化と賃金水準アップなどへの対応が求められ、等級制度の戦略的な見直しが急務となっています。2「職能資格制度」、「職務等級制度」、「職能資格制度」、「職務等級制度」、「役割等級制度」の違い「役割等級制度」の違い等級制度には大きく以下のタイプがあげられます。(1)職能資格制度従業員が現在持っている「能力(スキル)」に基づいて該当する等級に格付ける制度であり、これまで日本の企業で最も一般的に用いられて等級制度の基礎知識等級制度の基礎知識株式会社パーソネル・ブレイン 代表取締役 社会保険労務士 二にの宮みや 孝たかし32025.818きたものです。能力開発を基盤においた長期育成型ともいえますが、反面、昇格や昇進は年功や経験と結びつきやすく、実際の担当職務や成果との連動が曖昧になりがちで、職能とはいいながら、能力主義とは乖離した年功的処遇の温床になりやすいという問題を含んでいたといえます。(2)職務等級制度欧米型企業に多く見られる制度で、いわゆるジョブ型人事として注目されてきており、従業員個人の年齢や勤続年数ではなく、職務の内容に沿って担当と責任の範囲を明確にし、その付加価値に基づいて等級を設定するものです。組織の透明性は高まり、これから目ざすべき職務基準型の人事制度として注目されています。導入にあたっては、職務分析を行い、業務ごとの職務記述書(ジョブディスクリプション)

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