エルダー2025年8月号
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2025.820から、管理職や専門職にも多く採り入れられています。ただし、配置や異動は会社が発令するものであることから、従業員への納得性とモラール維持の面での配慮が欠かせません。(4)業績給業績給は、全社もしくは対象となるグループ組織の業績(結果としての成果)について分析評価し、その業績のなかから対象者に支給すべき原資を決定し、貢献度(寄与度)に応じた一定の配分ルールのもとに分配される賃金です。このことからメリハリがつきやすく、また会社としては実際にあげた業績の一部を従業員に還元するという合理的な賃金であり、都度キャンセルされる(毎期毎期が不連続)ということが特徴です。役割給は担当する役割(仕事の価値)を評価して決定されるのに対し、業績給はその結果(アウトプット)を評価して決定されます。業績給は、年俸制を採る場合や賞与制度で採り入れられています。4「ジョブ型」と「メンバーシップ型」「ジョブ型」と「メンバーシップ型」の考え方の考え方現在、人事制度の再構築において注目されているのが、「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」です。ジョブ型雇用は、 個々の職務内容を明確に(2)職務給職務等級制度と連動し、従業員が担当する職務の付加価値に応じて賃金を決定する制度です。グローバル企業や外資系企業に多く、公的資格の裏づけがあるなどかぎられた専門職や定型職務が多い業態では有効ですが、職務評価をはじめとして運用がむずかしい面があります。また、職務給は仕事の価値が上がればその時点から昇給、ダウンすればその時点から降給、変わらなければ維持というきわめて合理的で明瞭な賃金であるといえます。ただし、降給の場合には不利益変更の問題が出てくるので注意が必要です。(3)役割給役割給は職務給と同じ範疇に位置づけることができますが、異なる点としては、役割等級制度に対応し、職位など従業員に期待される役割責任の度合いや期待される成果に対応して賃金を決定するものです。大企業をはじめとして、日本の多くの企業が移行してきている方式で、設計、導入にあたっては職務給以上に柔軟性があり、経営環境に応じて変動しやすい人件費管理を含む人事マネジメントが運用しやすいのが特徴です。また、職務給ほど精緻なものではなく、役職位に連動することも特徴としてあげられること(1)職能給職能資格制度に基づき、従業員のスキルや知識、能力水準に応じて賃金を設定するものです。年功・勤続功労的に陥りやすく、担当職務の大きさや職責と乖離する可能性を含んでいます。そういう意味では、若年層を中心に処遇の納得感を得にくいともいえます。いい換えると、新卒を中心とした一括採用を念頭に、結果というよりも成長プロセスを重視する日本ならではの企業風土になじんできたともいえます。特に最初の段階は右肩上がりでアップしていくことになりますが、中堅の指導・監督職クラスになれば能力主義のもと、格差が拡大していきます。ただし職能給の設計と運用には年功的な要素を含んだ穏やかなものから、かなりメリハリをつけた実力強化型まで非常に幅広く、企業の実態に応じて独自のものとなります。なお、図表2の左に位置する年功給(「本人給」などともいわれている)などの属人給(個々の従業員の属性に対して支給する賃金)は、以前は基本給に正式に組み込んでいた企業もありましたが、最近ではあまり見なくなってきました。これは、職能給のなかには、もともと年功的な要素も含まれているため、年齢給と職能給をダブルの年功で設定する必要がないとの考え方から見直した企業が多かったためと思われます。

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