エルダー21特集高齢者雇用と賃金の基礎知識図表 職能と職務の違い(スーパーの鮮魚コーナーの例)※ 筆者作成切り口職能職務基本基準魚を3枚におろすことができる魚を3枚におろす業務を現在になっている着眼点どのくらいできるレベルにあるのか(抽象的であいまいになりがち)どのくらいの職務価値があるのか(個別具体的で比較可能なように客観性まで求められる)基本賃金職能給職務給課題職務の実態から外れることもあって、年功(勤続功労)に流される傾向にある「~ができるのに、現在担当させていない(いわば宝のもちぐされ現象)」ことや「~がまだ十分できないのに担当させる」こともある定めるとともに、職位ごとに必要な人材を配置・採用・評価する方式です。欧米をはじめとして、グローバル企業では一般的であり、成果主義のもと職務重視の文化に適しているといえます。これに対し、メンバーシップ型雇用は、日本の従来型雇用慣行であり、「人‥ヒト」に対して雇用契約を締結し、配置転換や育成を前提とする柔軟な制度です。OJT(OntheJobTrai‑ning)重視の社内専門職育成、中長期的な雇用安定、企業文化を醸成していくもので、ジョブ型と比較して、職務と賃金との連動性については薄いといえます。現在、「ジョブ型」への関心は高まってきていますが、日本型雇用との乖離や法規上、実務上の課題を受けて、「役割型」など、折衷型の人事を模索する企業が多いといえます。5高齢従業員にも対応可能な高齢従業員にも対応可能な等級制度等級制度超高齢社会の進展にともない、定年延長や再雇用者の戦力化が大きな課題となっています。等級制度の運用においても、高齢従業員に対して「役割の明確化」と「処遇の納得性」を両立させる必要が出てきています。特に再雇用者に関しては、次のような視点が重要となります。①年功的賃金のリセット職能資格制度をそのまま適用すると、再雇用後も「過去の評価」の延長での処遇に陥りがちなため、あらためて職務・役割基準で再格付けを行うことが求められます。②多様な選択肢の用意高齢従業員が自身の健康・生活状況に応じて、短時間勤務や限定業務などの選択可能な勤務制度に対応した、柔軟な制度設計が求められてきています。③評価制度とリンクしたうえでの密なコミュニケーション再雇用者などへの等級・処遇変更にあたっては、具体的な職務基準および評価基準を明示するとともに、納得がいくようなていねいな説明が不可欠であるといえます。6まとめまとめ等級制度の見直しは、人事制度改革の中核となり、従業員の成長、納得感、組織の生産性向上に直結するものです。特に中小企業では、経営層による方針の明確化のもとに、「できるところから段階的に進めていく」ことを念頭に、足元をしっかりと見すえた導入しやすい制度の設計が不可欠であるといえます。コラム職能と職務の違いは何か職能と職務の違いは何か職能資格制度でいう“職能(職務遂行能力)”と職務等級制度でいう“職務”の違いとはいったい何なのでしょうか?スーパーの鮮魚コーナーを例に考えてみましょう。図表を見てもわかるように、突き詰めると、両者の違いは必ずしも明確なものではないともいえます。“職務”の運用にあたっては、例えば、見習い段階として補助的業務に就いている場合や、人手不足のために担当させざるを得ない場合はどうとらえるべきかなどの問題がでてきます。すなわち、純粋に“職務”だけを見ても不十分であり、「~のような支援が求められる」など、“職能”を含めて実態をとらえることが必要になってくるといえるでしょう。これらのことから、職能基準ではあまり問題にならなかったことが、職務基準については、動機づけの面からも納得できるように客観的で合理的な基準(職務記述書)の策定が求められるといえるのです。
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