エルダー2025年8月号
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エルダー25特集高齢者雇用と賃金の基礎知識 ③運用設計の工夫回答者選定の基準設定を始め、集計・分析のシステム化が求められます。 ④フィードバックとフォロー結果報告を受けて、適正な解釈のもとに面談を通じての支援や行動計画の策定から、実効性をもたせるものです。一方で、昇給や賞与などへ直接反映すること(賃金査定)は、導入当初の段階では避けることが肝要です。また、再雇用者を含む高齢社員にも適用する際には、後輩からの評価が中心になることもあり、双方の理解が得られ、円滑に進めていくために評価範囲やフィードバックにあたってさらなる工夫が求められるところです。6まとめまとめ評価制度は、導入して終わりでは決してなく、「運用」を重ねたうえでの柔軟な「見直し」が重視されます。このために、以下の点に留意する必要があります。 ①組織文化と整合させること制度だけが先行すると形骸化します。現場の管理職や従業員が制度の趣旨を理解、納得し、日々の職務行動に活かす仕組みと、このためのマニュアルなどの整備が欠かせません。②評価者研修の定期的実施評価者には、行動を逐次観察する能力をはじめ、部下とのコミュニケーションスキル、フィードバック技術などが広く求められてきます。定期的な研修やケーススタディを通じて評価能力を高めていくことが重要です。 ③高齢社員を含む多様な人材への対応役割・等級の明確化に加え、多様な働き方(短時間勤務、副業・兼務、在宅勤務など)にも配慮した評価基準の策定が求められます。 ④評価のPDCAサイクル制度導入後も必要な見直しをいとわず、制度の運用状況や社員の納得度、業績との関連性におけるフォローが欠かせません。「戦略的な人事」を進めるためには、評価制度の見直しを継続し、評価制度の効果を高める姿勢が重要となります。以上、人事評価制度は企業の持続的な成長と働く人々の活躍を支える戦略そのものであるという認識をもつ必要があります。これからは、多様な人材がそれぞれの能力を最大限に発揮し、組織に貢献できるような効果的な評価制度となるよう目ざすとともに、これを的確に運用していくことが、これからの人事制度のキーファクタ―になってくるといえるでしょう。少なからずあります。 ①バイアス発生のリスク個人的な好き嫌い、なれ合いからの相互の高い評価など、正当でないバイアスが発生することを前提におく必要があります。 ②負担と運営コストのリスク説明会から実施、集計、フィードバックなど人事部門と当事者の負担が大きくなります。 ③心理的ストレスのリスク批判的な意見が匿名で発せられることになり、不安と疑念が生じやすくなります。 ④実態と乖離のリスク評価者が対象者と接触の少ない場合や、評価者の評価能力や偏りなどもあらかじめ考慮する必要があります。(2)360度評価導入の留意点リスクが大きいために以下に留意する必要があります。 ①目的と対象の明確化何のために360度評価を行うのかを明らかにし、目的に応じた項目を設定することが求められます。 ②評価者の選定評価者による偏った評価を避けるための選定および説明会の実施とあわせて匿名性の担保を確保することが求められます。

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