2025.8441はじめに第1回※1では、がんの罹患率が高まるのは高齢者であること、がん治療の進歩により、治療を継続しながら就労可能な人が増えていることなど、特に医療の視点からご紹介しました。第2回となる今回は、職場を含む社会全体で治療と仕事の両立がしやすい環境になってきているのか、治療と仕事の両立のしやすさのために企業には何が求められているのか、という視点でご紹介したいと思います。2がん治療と仕事の両立のしやすさの現状(1)がんと診断されてから仕事を辞める人国立がん研究センターが実施している患者体験調査※2によれば、がん診断時に収入のある仕事をしていた人のうち19・4%(2023年)が、がん治療のため、退職・廃業をしていました。さらに、退職・廃業をした人のうち、58・3%が、治療を開始する前に退職・廃業をしていま※1 本連載の第1回は、当機構(JEED)ホームページでお読みいただけます。https://www.jeed.go.jp/elderly/data/elder_202507/index.html#page=46➡※2 国立がん研究センター「患者体験調査」 https://www.ncc.go.jp/jp/icc/policy-evaluation/project/010/2023/index.htmlした(45ページ図表1)。病気をきっかけに仕事との向き合い方を見直し仕事を辞める方もいますが、病気の受け入れが不十分な状態で、「周囲に迷惑をかけたくない」と、治療と仕事の両立の困難を想像して性急に仕事を辞める人も一定数いると考えられています。辞めたあと、治療が一段落した際に辞めたことを後悔する方もいらっしゃいますので、医療機関でも診断時に「急いで辞めないように」との声かけの重要性が指摘されています。しかし、高齢者の場合、体力的な不安やキャリア終盤期において「もう十分に働いた」という思いを口にされることもあり、医療機関のスタッフも就労継続について積極的な助言を控える傾向もあり得ます。そのため、職場の担当者の方にお願いです。病気が判明してすぐに退職がんと就労ー治療と仕事の 両立支援制度のポイントー二人に一人が罹患するといわれる病気「がん」。医療技術の進歩や治療方法の多様化により、がんに罹患したあとも働きながら治療を続けている人は増えています。その一方で、企業には、がんなどの病気に罹患した社員が、治療をしながら働き続けることのできる環境や制度を整えていくことが求められています。本企画では、特に「がん」に焦点をあて、その治療と仕事の両立支援に向け、企業が取り組むべきポイントを整理して解説します。産業医科大学 医学部 両立支援科学 准教授永なが田た 昌まさ子こ第2回職場で求められる両立支援とは
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