エルダー45を申し出てこられた従業員の方がいらっしゃいましたら、退職を保留し、まずは休業することを勧奨いただくと、本人にとってよい選択に結びつくことがあります。なお、75歳以上は、後期高齢者となり、傷病手当金(私傷病で4日以上欠勤すると、請求できる)は支給されませんので、ご注意ください。(2)がんと診断されたことを職場に伝えるか両立支援を受けるためには、病気であることを申し出るところから始まりますが、病気であることを開示することにより、必要以上に心配されたり、就業機会を奪われたりするなど本人が希望していない職場の反応も想定されるため、がん患者の就労が受け入れられていないと感じる状況であれば、病気であることの申し出をためらったり、嫌がったりする人も多いかもしれません。現状、情報を開示している人の割合をみていきましょう。職場や仕事関係者にがんであることを伝えた人は89・0%と、2018(平成30)年度の81・0%から増加し、職場での情報開示が進んでいることがわかります。ここでさらに注目すべきは、治療と仕事の両立に配慮があったと感じた人が74・5%と、2018年度の65・0%から増えている点です(図表1)。これは、職場全体の意識改革が進んでいることを示しているといえるかもしれません。※3 内閣府「がん対策に関する世論調査」 https://survey.gov-online.go.jp/r05/r05-gantaisaku/(3)社会全体からみる「治療と仕事の両立のしやすさ」第1回の記事でご紹介したように、がん治療は外来で行われることが多くなってきているため、治療と仕事の両立のためには、「通院のために休みをとりやすい」もしくは「柔軟な働き方ができる」ことが重要となります。内閣府が行っている「がん対策に関する世論調査」※3では、「がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、現在の日本の社会は、働き続けられる環境だと思いますか?」という問いに対し、「そう思う」、「どちらかといえばそう思う」と答えた人は合わせて45・4%(2023年)でした。2016年の27・9%、2019年の37・1%から増えており、社会全体でも、治療しながら働くことへの理解が進んでいるといえます(46ページ図表2)。一方、依然として約半数は、働き続けられる環境でないと回答していることも注目すべき事実です。抗がん剤投与以外にも各種検査や治療のための通院も合わせると、年次有給休暇がなくなってしまい、通院以外の理由で休むことができない状況となり、働き続けることに不安を感じる患者さんも多くいます。年次有給休暇以外の制度として、病気欠勤などの制度があると、ルールに則り欠勤(通院)し、治療と仕事の両立を図ることができる事例もあります。出典:国立がん研究センター「平成30年度、令和5年度患者体験調査」図表1 がんと診断された人の両立支援の状況2018年度2023年度 がん診断時に収入のある仕事をしていた人44.2%44.1%診断時に働いていた職場や仕事上の関係者にがんと診断されたことを話した人(がん診断時に収入のある仕事をしていた人のみ)81.0%89.0%職場や仕事上の関係者から治療と仕事を両方続けられるような勤務上の配慮があったと思う人(がん診断時に収入のある仕事をしていた人のみ)65.0%74.5%治療開始前に就労の継続について医療スタッフから話があった人(がん診断時に収入のある仕事をしていた人のみ)39.5%44.0%がん治療のため、休職・休業した人(がん診断時に収入のある仕事をしていた人のみ)54.2%53.4%がん治療のため、退職・廃業した人(がん診断時に収入のある仕事をしていた人のみ)19.8%19.4%がん治療開始前に退職した人(がん診断時に収入のある仕事をしていた 人、かつ、退職・廃業した人のみ)56.8%58.3%
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