2025.846このように治療と仕事の両立のしやすさは、会社が持っているルールに依存する事例があるため、会社が事前に環境整備として、ルールをつくっておいていただけると治療と仕事の両立が進みます。3会社が事前に行っておく環境整備がん治療と仕事の両立のしやすさに必要な環境整備を考えていきましょう。事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドラインに沿って確認していきます(47ページ図表3)。(1)基本方針の表明と意識啓発の重要性治療と仕事の両立支援を実施する際、当事者をサポートするために、上司や同僚等に負荷がかかることがあります。過度の負担とならないように配慮する必要があるとともに、一定の負担を理解し協力してもらうために、関係者の理解は欠かせません。関係者の理解を得るために、事業者の方針の表明や、両立支援の必要性や意義についての意識啓発が進むと、いざ事例が出た際も安心して、受け入れることができます。企業の先進的な取組みとして、「社内ピアサポート」という取組みをご紹介します。がんを経験した社員が、同じくがんに直面している(または治療中・治療後の)社員を支える仕組みや活動のことです。ここでいう「ピア(peer)」は「同じ立場の人」、「仲間」という意味で使われており、患者同士の支え合い(ピアサポート)の企業内版です。大企業であれば、がんを経験した社員は複数います。社内ピアサポートの取組みが進むと、そのほかの社員の方に対しても、がんに罹患しても就労できることの安心感、両立支援の必要性や意義の意識啓発につながると考えます。(2)相談窓口などの明確化当事者の相談窓口や、申し出があった際の関係者間の役割を整理しておくと、相談がたらい回しにならず、情報が過不足なく伝えられると考えられます。相談窓口は、産業保健スタッフもしくは人事労務スタッフが担当することが多いです。社内ルール(休業期間や休業願いなどの必要な文書について)、社会保険料や復職の手順や必要な文書などについて説明するなかで、両立支援の申し出の有無について確認するとよいでしょう。両立支援の申し出において、症状や治療の状況などの病気に関する情報が必要となりますが、これらの情報は機微な個人情報であり、取り扱う者の範囲を決める、情報を同僚などに開示する場合は本人の同意を得るプロセスが必要です。特に、性別に特有のがん(子宮がん、卵巣がん、精巣がん、前立腺がん)の病名の開示を嫌がる労働者の心情もあることと、職場に必出典:内閣府世論調査「がん対策に関する世論調査」(2016、2023) 図表2 仕事と治療等の両立について2016年2023年0%100%80%60%40%20%1.そう思うそう思わない無回答2.どちらかといえばそう思う3.どちらかといえばそう思わないQ. 現在の日本の社会では、がんの治療や検査のために2週間に一度程度病院に通う必要がある場合、 働き続けられる環境だと思いますか。この中から1つだけお答えください。9.8%9.8%18.1%18.1%35.2%35.2%29.3%29.3%7.7%7.7%8.6%8.6%36.8%36.8%39.1%39.1%14.5%14.5%1.1%1.1%
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